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クラーケンは旧約聖書にも登場?北欧の海に棲む巨大怪物を求めて

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海の巨大怪物「クラーケン」が北欧を中心とした船乗りたちの間だけでなく、広く知られるきっかけとなったエーリク・ポントビダンの『ノルウェー博物誌』(1752年)以後、18世紀から19世紀にはクラーケンについての記述が出て来ます。

18世紀以降になぜクラーケンが関心を持たれるようになったのかは、またあらためて考えてみるとして、その当時の記述をご紹介してみることにしましょう。

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18世紀後半の航海物語に記されたクラーケン

スウェーデンの著述家で船乗りのヤーコブ・ヴァレンベリという人が、彼の著書『マイ・サン・オン・ザ・ガレー(ガレー船上の息子)』(1781年)でクラーケンについて触れているそうです。

この本は、18世紀後半にスカンジナビアからアジア・極東までを旅した航海の物語。18世紀後半といえば、イギリスから産業革命が始まりヨーロッパでは啓蒙思想が広まります。またアメリカの独立戦争やフランス革命がやがて起き、近代社会が始まっていく頃です。モーツアルトやベートーヴェンなどの偉大な音楽家たちが生きた時代でもあります。日本でいうと江戸時代の後期で、化政文化を中心とした町人文化の最盛期が始まる頃になります。

ちなみに、クラーケンが登場する映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの時代は17世紀が設定されていて、ヤーコブ・ヴァレンベリの著書に描かれた航海の時代はその次の世紀ということです。

 

クラーケンは島クラスの巨大さ?

さて、ヤーコブ・ヴァレンベリの著書でクラーケンは「Crab-fish(蟹魚?)」とも呼ばれていると紹介され、複数の頭と尾が数えられると記しています。カニ蒲鉾のことを「crab fish cake」と英訳するそうですが、これはもちろん関係ありません。

その大きさは、バルト海にあるスェーデン領エーランド島よりも大きくはないとして、つまりは16キロメートル未満であると記しています。エーランド島は、全長が1,342キロメートルもある細長い島で幅が16キロメートルですから、この島の幅の長さよりは小さいということです。それにしても16キロメートル未満の体長とは、まさに島クラスの巨大さです。

ヴァレンベリは、エーリク・ポントビダンがクラーケンについて記述していることも述べながら、クラーケンが常に魚に囲まれそれを捕食すること、排泄に3ヶ月以上かかりその排泄物が魚の群れを養っていること、漁師たちは水深を測ってクラーケンが海底にいるのを判断するといったことなどを記しています。

 

旧約聖書の海の怪物と同一視されたクラーケン

クラーケンが10から12ファゾム(尋/ひろ)つまり2メートルぐらいまで海上に浮上すると、漁船は逃げ出します。クラーケンはいくつもの鼻孔から海水を噴出させ、海に噴流の渦を作り出し、その大きさは数マイルにも達すると言います。

そしてヴァレンベリは、「これがレヴィアタンのなせる業だと、誰が疑うことができるだろうか」と記しています。

「レヴィアタン」とは、旧約聖書に登場する海中に棲む巨大な怪物のこと。神が天地創造の5日目に創造したもので、その鎧のような硬い鱗とあまりの巨大さから最強の生物とされます。口からは炎を吐き、鼻からは煙を噴き、口には鋭く巨大な歯が生えていて、その性質は凶暴。獲物を探して波を逆巻きながら海を泳いでいるとされます。

ユダヤの伝説では、陸を象徴する「ベヒモス」(イスラム教のバハムート)と、空を象徴する「ジズ」の3つの怪物が3対をなし、世界の終末にレヴィアタンとベヒモスは死闘を科せられ、残った身体は終末を生き残った「選ばれし者」の食物となるのだといいます。

レヴィアタンは船の周りをぐるぐると泳ぎ回って渦巻きをつくり、船を飲み込んでしまうと信じられていたことから、ヴァレンベリはクラーケンとレヴィアタンとを同一視したのかも知れません。こういったことからも、後にクラーケンが凶暴な海の怪物とされていったのでしょうか。

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