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フランケンシュタインの怪物と現代のプロメテウスとは

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イギリス人女性のメアリー・シェリーが1818年に出版した小説『フランケンシュタインの怪物』の原題は、正しくは『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』といいます。

フランケンシュタインとはもちろん、怪物を造り出した主人公のヴィクター・フランケンシュタインのこと。それでは「現代のプロメテウス」とはどういうことなのでしょうか。

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人間に与えられたプロメテウスの火

「プロメテウス」はギリシャ神話に登場する神で、天空神ウラノスと地母神ガイアとの間に生まれた巨神族ティターンの一員であり、ウラノスとガイアの孫にあたります。

叔父でありティターン族の長であったクロノスが全能の神ゼウスとの戦いに敗れたとき、プロメテウスはゼウスの味方をしてその配下となったのですが、やがて人間に容赦のないゼウスと対立し、人間のために「天上の火=神の焔」を盗み出して与えたことからゼウスの怒りをかってしまいます。

そしてプロメテウスはカウカーソス山の山頂に磔にされ、生きながら鷲に毎日、肝臓をついばまれる責め苦にあいます。しかしプロメテウスは不死だったので、その刑罰は3万年にも及び、半神半人の英雄ヘラクレスによってようやく救い出されるのです。

一方、プロメテウスから火と知恵と技術を与えられた人間は、文明を作り出すことができるようになります。しかし同時に、火を得たことによって武器を作り戦争をするようにもなってしまうのです。このことから「プロメテウスの火」は、原子力などのように強い力を持ちながら反面リスクも伴う科学技術を表す言葉ともなりました。

 

ギリシャ神話で人間を創造したのはプロメテウスだった

プロメテウスの名前は、「先に考える者」という意味なのだそうです。つまり先見の明を持った、知恵を象徴する神であるわけです。ギリシャ神話では、そもそも人間を創造したのはこのプロメテウスであると言われています。

ゼウスがクロノスとの戦いに勝って世界を支配するようになった後、地上には神々を崇拝する者たちが存在しないことを憂いたゼウスは、人間を創造することにしました。そこでその役割を担ったのがプロメテウスです。

プロメテウスは粘土をこね、神々の姿に似せて何人もの人間の身体を造りました。そしてその身体に生命を吹き込んだのが女神のアテナです。アテナはオリュンポス12神のひとりで、やはり知恵や芸術を司る神とされています。

こうして生命を得た人間は、神々に捧げる生け贄について神と話し合い、約束をすることになりました。このときにプロメテウスは人間の味方をして、生け贄の牛を切り分けて人間の方に肉と内蔵を置き、神の側には脂身で覆われた骨を置きました。ゼウスは計略にはまって脂身と骨を選んでしまい、このことから神には骨を捧げ、人間は肉を食べることができるようになったということです。

 

知恵を与えなかった現代のプロメテウス

このように人間を造り出し、人間に味方して知恵と技術を与えた神であるプロメテウス。しかし「現代のプロメテウス」とタイトルに書かれた『フランケンシュタインの怪物』のヴィクター・フランケンシュタインは、自ら人造人間を造り出したにも関わらずそれを怪物と怖れ、早々に見放して知恵を与えることはありませんでした。

怪物はやがて自分で人間の言葉を学び知恵を得ることになりますが、それでもやはり神ならぬ人間が造ってしまった怪物として、悲劇の結末を迎えることになってしまうのです。

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