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中世ヨーロッパの錬金術にヘルメス・トリスメギストスが与えたもの

夜空
 
錬金術の世界で浸透しているキーワードである「一は全なり、全は一なり」は、個々人が考える「一」は、あくまでも主体が「個人」であったときの「一」であり、主体が個人ではなくその対象、つまり「個人が認識できる外の世界のすべての出来事」もまた「一」であり、それを「大宇宙(または全宇宙)」ととらえるような考え方です。

中世ヨーロッパではまだ支配的な考え方であった、地動説にもつながるこの思想は、今も人間の思想や宗教的な概念のひとつとして、多くの人々が認識し続けている、普遍的な思想でもあります。

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大宇宙と小宇宙は相互に影響を与える

「一は全なり、全は一なり」の思想をもう少し整理してみると、まず個人=小宇宙と、個人以外=大宇宙が存在しています。そして、小宇宙(=ミクロコスモス)と、大宇宙(=マクロコスモス)は、非常に密接な関連性を持っています。

全体の「一」は、個々人の「一」の総体としての「一」であり、互いに影響を与えることができます。たとえば現代において一般的にいわれている「平和」は、一見社会全体の事象として漠然と信じられている事象のひとつですが、実態としては個々人の感覚の総体であり、また(マスコミやネットでの噂や世論などを含めて)総体の「一」の側から見た場合、総体が「平和」であるからこそ、個々人が「平和」である、と感じている、ともいえます。これは、「不景気」や「少子高齢化」などにも当てはまります。

 

フラスコの中での化学反応の影響

このような思想の中で錬金術では、総体を神や霊として捉える一方、個々人としての活動が、総体に与える影響の可能性を追求していきました。錬金術がおこなっている、例えば「卑金属を貴金属に変える」試みは、実験室のフラスコの中でおこなわれていましたが、フラスコの中=小宇宙としてとらえると、その影響はフラスコの外=大宇宙にも通じる、と考えたのです。

端的にいえば、「卑金属を貴金属に変える」、「不老不死の力を手に入れる」という試みは、総体としての「神」になるための試みであった、と考えられます。

こういった思想を伴って、それまで錬金術の世界で試行錯誤が続けられていた物理的な側面と、霊的精神的な側面が融合し、中世ヨーロッパ以降の錬金術思想、つまり「ヘルメス思想」が構築されていきました。ヘルメス・トリスメギストスは、後年の錬金術のイメージを作っただけではなく、現代の科学の進歩の背景にある、好奇心や探求心、継続に必要な忍耐や努力など、スピリチュアルな部分をも包含して物事を進めていくための布石にもなったのです。

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カテゴリ: その他

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