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ムシュフシュ…最初の”名を持つ龍”は古代メソポタミアで生まれた!

ドラゴン エンブレム
 
龍がどこで生まれたのかを探して行くと、「古代メソポタミア」に辿り着くと言われています。
古代メソポタミアとは、ご存知のようにオリエント(中東)の地、現在のイラクやシリアを流れるチグリス川とユーフラティス川に挟まれた平野に、世界で最も古い文明が起こった場所です。この「古代メソポタミア文明」はメソポタミアに生まれたいくつかの文明の総称で、その中で最も古いとされているのが多くの謎に包まれた「シュメール文明」。紀元前9000年頃にはシュメール人がメソポタミア南部にやってきて、農耕が始まり都市ができ、世界最古の都市文明が起こったとされています。

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その後、紀元前1900年頃にはシュメールを征服したアムル人がバビロンを都とした「古バビロニア王国」を起こし、やがて征服者が替わり「ヒッタイト帝国」「アッシリア帝国」「新バビロニア王国(4帝国時代)」「ペルシャ帝国」と時代が続き、紀元後には「ローマ帝国」の属州を経てペルシャ、イスラムの支配する地となって行きました。
そして、このメソポタミアの古代文明であるシュメールやバビロニアが、その後の東西世界に広がる龍が生まれた起源の地ではないのか、とも考えられているのです。

 

シュメールに龍はいた?

古代メソポタミアで最も古いシュメール文明は、古代エジプトの「ヒエログリフ」と並んで最も古い文字である「楔形文字(くさびがたもじ)」を生みだし、それによって世界最古の神話と言われる「シュメール神話」を遺しました。

しかし残念ながら、このシュメール神話には龍に関する記述や物語はありません。
また、シュメールの都市国家であったウルクの王ギルガメッシュの伝説「ギルガメッシュ叙事詩」は、旧約聖書にも影響を与えたと考えられる古代の物語ですが、ここにも直接的に龍は登場しません。しかし「ギルガメッシュ叙事詩」には、大洪水を生き延びた不死の人「ウトナピシュティム」から、ギルガメッシュは不死となる薬草(海底に生える若返りの薬草)の在処を教わり手に入れたが、それをヘビに食べられてしまった、という話があります。ヘビはこれにより、脱皮を繰り返して再生することになります。

また、シュメールの都市国家遺跡から発見された「円筒印章」(粘土板に転がして文字や図柄を写す円筒形の印章)には、龍または竜蛇と思われるような図柄がありました。

 

龍の起源は「ムシュフシュ」?

古代メソポタミアには「ムシュフシュ」という聖獣がいます。このムシュフシュは図像や伝説に描かれて発見されているのですが、最も古いものとしては、紀元前2350年頃にシュメールの都市国家を征服して世界最古の帝国となった、「アッカド王朝」の時代の印章にその姿を見ることができます。

ムシュフシュはシュメール語では「怒れる蛇」という意味であり、シュメールの時代から古代メソポタミア文明で長く語り継がれて来た聖獣です。その姿は、頭と胴体と尾は毒蛇(またはサソリの尾)であり、前足はライオンで後足はワシ、頭には2つの角を持っています。

このムシュフシュ、アッカド時代の記述ではシュメールの都市国家「ラガシュ」(現代のイラク南部のテル・アル・ヒバ)の主神である「ニンギルス」の神殿を護る聖獣であり、また都市国家「エシュヌンナ」の神「ニンアズ」に従っていたあと、神が「ティシュパク」に替わるとそれに従う聖獣となり、ハムラビ王がこの地を征服して古バビロニア王国を建てると、首都である「バビロン」の守護神「マルドゥク」に従うようになったとされています。

そしてムシュフシュこそが、最も古い「名前を持った龍」なのではないかと考えられているのです。

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