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現代に生き続ける錬金術~魔術との融合と分岐を越えて


 
16世紀、当時のドイツ人神学者であるマルティン・ルターを中心に、いわゆる宗教改革がおこなわれ、キリスト教会の大規模な分離がなされました。

当時の分離はこんにちにおいてもカトリックとプロテスタントという主流二派として存続しており、宗教改革がいかに大きな変化であったか、また当時の人々だけにとどまらず、現代に生きる人々にも影響するような、思想的に根源的な部分に触れる出来事であったかは、想像に難くありません。

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キリスト教の分派と魔術・錬金術の分岐

この時期にさかんだった錬金術は、古くから存在していた魔術の概念と融合し、多くの秘密結社を生み出すとともに、現代科学技術および化学技術の実質的な出発点ともなりました。

魔術は、薔薇十字団やフリーメーソン、イルミナティといった秘密結社として地下に潜行し、より内面的で概念的な方向に進み始めます。対する錬金術は、中世以前に存在していた治金術(金属の精錬や合金技術であり、治金術が元素や質量保存などの化学的な裏付けがなされる以前からおこなわれていたことは、周知の事実です)や火の取り扱いの発展形として、物質の本質である元素の発見や定義、質量保存の法則の発見、技術の文書化や定量化などの可視化が進んでいき、こんにちの科学や化学の礎となっていきました。

 

近代科学技術として発展した錬金術

中世ヨーロッパ以後、錬金術の持つ概念的観念的な要素は魔術に包含され、科学的化学的な要素の追求がおこなわれるようになったのですが、その過程においては、キリスト教圏のみならず、イスラム教圏や仏教圏の識者、ひいては人類全体が参画して研究開発・精査がおこなわれています(中世ヨーロッパにおける錬金術的な試みは、もともと8~9世紀頃の、イスラム教圏の金属加工関連の取り組みをベースにしている、という説もあります)。

錬金術全盛の時代のスイスの医師パラケルススをはじめ、アイルランドの化学者ロバート・ボイル、18世紀に活躍したフランスの化学者アントワーヌ・ラヴォアジェなどは、まさに「近代化学の父」ともいえる存在です。

19世紀にはいると原子論の議論が始まり、近代でもっとも有名な物理学者であるアインシュタイン博士の功績に繋がっていきます。そして半導体用素材の開発や集積回路の生産、これらを使用した電子機器やコンピュータの出現と、錬金術のアプローチは、魔術や宗教との分離を経て、革新的な進歩を遂げてきたのです。

これから先の時代も、人間の内面を見つめる「魔術的な要素」と、外的要因(物質加工という物理の分野や、不老不死や病の撲滅といった医療科学の分野など)から人間の可能性を広げていくという「錬金術的な要素」は、共存しながら存続していくことでしょう。

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カテゴリ: その他

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