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クローン技術へと引き継がれたホムンクルスへのアプローチ

サイコメトリー
 
中世ヨーロッパで錬金術師パラケルススによって提唱されたホムンクルスは、17~18世紀頃のいわゆる「近代遺伝子工学前夜」の時代に、シャルル・ボネやクリスティアン・パンダーという学者や識者を巻き込んで、実在性についての検証や議論が活発になされています。

この論争は長い間決着せず、19世紀の終わりまで続くことになります。その後「ホムンクルス=生殖なしの人体創造」は、クローン技術として実用化にまで昇華されていきます。

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ウニのクローン作成に成功

ホムンクルスが精子または卵子に既に存在しているという「個体ミニチュア説」と、もとは単細胞生物が分裂したかのようなシンプルな個体でしかないとする「胚説」との論争は、19世紀終わりころには、実験結果の検証によって決着させようとする動きによって、ようやく着地を迎えます。

1892年、ドイツの生物学者、ハンス・ドリーシュは、1891年頃、ウニを使って世界最初の動物クローニング(クローンを作成する行為を意味します。これに対してホムンクルスは、個体そのものと、個体作成のプロセス両方を意味しています。)を成功させています。

このときに取った方法は、受精卵を分割して胚を人工的に作り出し、それぞれを使って正常なウニの幼生を作り出す、つまり「胚説」を立証するものでした。

以降はカエルやコイといった両生類、魚類について、ハンス・ドリーシュと同様の手法をもってクローン作製に成功し、その後卵子に対して体細胞を直接注入する方法である、「ホノルル法」と呼ばれるクローン製造技術が開発され、1996年のヒツジのドリーをはじめ、ネコやヤギ、ウサギ、ブタ、ネズミなど、多くの哺乳類でのクローン作成成功例が報告されています。

 

ホムンクルスが実在しているという解釈も実在

胚説の完全勝利、つまりホムンクルスで提唱された「個体のミニチュアから人間が成っている」という説が全否定されているかというと、そうではありません。

1896年頃、フイッシェルという学者によって、クシクラゲが個体のミニチュア的な形状を持っていることが発表されていますが、この説は「クシクラゲの特性によるものである」として整理されています。この例を見ても、錬金術におけるホムンクルスのアプローチは、(人間に対して有効かどうかはともかく)哺乳類をはじめとした多くの生命体にはあてはまらないものの、例外的にはありうることを示しています。

このように、錬金術におけるホムンクルスという概念は、イメージよりもかなり科学的な裏付け検証が積み重ねられており、クローン技術という形で現代にも引き継がれているのです。

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カテゴリ: その他

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