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古代丹後王国の浦島伝説2:束の間の楽しい日々と哀しい結末

浦島伝説

 

「丹後国風土記」の浦島太郎伝説=浦の嶋子の伝説は、日本書紀の記述と並んで日本で最も古いもので、その時代は古墳時代にまで遡るものです。
物語では、丹後国与謝郡日置の筒川村(現在の伊根町筒川)の「筒川嶋子(つつかわしまこ)」、またの名を「水江の浦の嶋子」という容姿端麗の若者がある日、海に舟を浮かべて釣りをしていると五色の亀を釣り上げ、その亀は美しい乙女の姿となって嶋子を常世の国へと誘いました。

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常世の国に到着し亀姫の夫となった浦の嶋子

乙女と嶋子を乗せた舟は、やがて大きな島へと辿り着きます。そこの地面は玉石が散りばめられたようで美しく、その先に光り輝く壮麗な宮殿がありました。乙女は嶋子の手を取って歩いて行き、門の前で待つように言って中に入って行きます。
すると7人の子供たちがやってきて、嶋子を見て「この人が亀姫様の夫になる人だ」と言い合い、次に8人の子供たちが来て「亀姫様の夫はこの人だよ」と話しています。嶋子を連れて来た美しい乙女は亀姫でした。その亀姫が出て来たので子供たちのことを話すと、「7人の子供は昴(すばる)で、8人は畢(ひつ=あめふりぼし)です」と教えてくれました。昴も畢も天の二十八宿(28の星座)です。

 
宮殿の中に二人が入ると亀姫の両親である海神(わたつみ)が出迎え、兄弟姉妹たちや多くの人たちとたくさんのご馳走を囲んで、美しい歌声を聞き舞い踊る姿を見ながら楽しい宴が始まりました。そして、日も暮れて夜になり皆が帰ると嶋子と亀姫だけが残り、二人は夫婦となりました。

 

 

亀姫と常世の国で3年間を過ごした浦の嶋子

それから嶋子は亀姫との楽しい日々を過ごし、やがて3年の月日が流れます。
嶋子は故郷や父母のことを想うようになり、食事も進まず顔色も悪くなって行きました。心配した亀姫が尋ねると嶋子は、「人は故郷を懐かしむものだ」と言い「故郷が忘れられないし、両親にも会いたい。だから少しの間だけでも故郷に帰りたい」と話しました。
亀姫は「あなたと私は永遠に一緒に暮らすと誓ったのに、私を残して帰ってしまうのですね」と涙を流します。しかし、嶋子の帰りたいという思いの強さがわかり、亀姫は嶋子を送り出します。

 
故郷に帰る日、亀姫は嶋子に玉櫛笥(たまくしげ/櫛などの化粧道具を入れる美しい箱)を渡し、「故郷に帰っても私を忘れないでください。この箱を差し上げますが、また私に会いたいと思うなら決してこの箱を開けないでください」と言いました。嶋子は、箱を決して開けないと約束します。

 

 

300年が過ぎた現世に戻った浦の嶋子

舟に乗り目を閉じると、あっという間に故郷の水江の浦に帰り着きました。ですが、故郷の様子がかなり変わっていることに嶋子は驚きます。かつての住んでいた村もなく、景色も見たことがないものでした。
しばらく歩いて、そこにいた村人に尋ねてみると、「今から300年ほど昔に、嶋子という者が海に出たまま帰らなかったという話を聞いたことがあります」と、不思議そうに教えてくれます。亀姫と常世の国で過ごした3年間は、現世では300年もの長い年月だったのでした。
落胆し、何日もさまよい歩き続けた嶋子は亀姫に会いたくなり、もらった玉櫛笥をなでていましたが、やがて居ても立ってもいられなくなり、約束を忘れて箱を開けてしまいました。少し開けただけで箱の中から芳しい香りが天に流れて行き、ようやく嶋子は亀姫との箱を開けてはいけないという約束を思い出しました。しかし既に遅く、嶋子の顔はたちまち皺だらけになってしまいます。
もう亀姫とは会えないことを知った嶋子は、涙を流してあたりを彷徨うのでした。

 
このように浦島伝説とは、なんとも哀しい結末を迎える物語だったのだと、あらためて思わせる伝説なのです。

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