> >

驚異の天文盤ネブラ・ディスクは5つの世代を経て作られた?

195507
 
ドイツ北東部のザクセン・アンハルト州はネブラで発見されたことから、ネブラ・ディスクと名付けられた天文盤は、約3600年前に当地に埋められる以前に、5世代にわたって加工が加えられていたとの見方が、発見後の専門家による調査によってなされています。変革の正確な年代は判明していないものの、加工の大分類としては、第1世代が満月と三日月とプレアデス星団の時代、第2世代がアーク(太陽の軌跡)の時代である、とされています。そしてその後も、第3~5世代まで加工が継続された形跡が認められています。

スポンサードリンク


 

抽象的な小舟の追加

第3世代を示す大きな特徴が、小舟です。現在でも腕時計などに取り入れられているデザインのおおもととなっている意匠は、この時期の絵柄に由来している、と考えられます。従来からあった満月(第2世代を経たことで、太陽とのダブルミーニングであると考えられます)と三日月の下部分、ディスク全体を「笑った人間の顔」ととらえると、満月と三日月の目に対して、口の部分に当たる箇所に、小舟のような絵柄が追加されています。この絵柄の追加根拠としては、青銅器時代に浸透していた「太陽が昼夜問わず動き続けているように見えるのは、船に助けられているものである」という、北方神話のエピソードが考えられます。先の述べた腕時計でも、まさにそのようなイメージで動くような細工がなされています。

 

君主制の台頭をあらわす穴

第4世代では、ネブラ・ディスクの縁部分に穴が付与されています。これは、君主の旗や、君主を象徴するようなオブジェに固定するための穴であった、と推測されています。この根拠は、先に描かれていた、天文学的に意図があったと思われる絵柄や加工とは無関係に、規則正しく穴があけられていることです。この時期には、君主をあらわすなんらかのオブジェにネブラ・ディスクを固定し、戦時などにはそのまま運搬されたりしていたのではないか、と考えられます。

 

ついにアークが取り除かれる

そして第5世代を迎えたネブラ・ディスクは、先の世代で追加されたアークが取り除かれることとなります。君主制が台頭し始めた先史時代には、宗教的に大きな影響力を持つ物品が破壊されたり、破棄されたりすることが多くなっていった、と考えられていますが、アークの消滅もその一環ではないか、と思われます。その後ネブラ・ディスクは、時代を反映するように、天文盤としての位置付けから、金で装飾されたり、剣などの武器と一緒に取り扱われたりするなど、王侯貴族の宝飾品としての位置付けに変化していきます。そして最晩年、つまり約3600年前には、ついに領主の埋葬と共に、宝飾品として埋葬されるに至ったのです。あくまでも推論ではあるものの、ネブラ・ディスクが5世代に渡って変革していった背景には、古代に生きる人々の思惑や情勢が深く関わっている、といえそうです。

このエントリーをはてなブックマークに追加


スポンサードリンク
スポンサードリンク

カテゴリ: その他

Comments are closed.