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旧約聖書(創世記・レビ記)に記されている食生活から現代の食を考える

食事
創世記の記述はユダヤ教徒やキリスト教徒でない人には関係ないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。創世記の第一章から第十章の記述は誰でも読んで味わうべきです。人の書いたものですからすべて正しいとは言えないでしょう。誤解や誤訳もあるでしょう。自身の向上に応じて読み直すべきです。

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さてその創世記では食についてどんなことが書かれているのでしょう。

 

1. 現代の食問題あれこれ

人も動物も生きるため食べねばなりません。食についても他の場合と同様に社会が複雑になるほど様々な問題が起きます。食料に乏しく発育不良で病気にかかりやすい人々やはなはだしい場合は餓死する人までいるかと思えば、美食や飽食に明け暮れる人々もいます。食に絡んでは以下のような様々な問題があります。

 
・乱獲や生存環境の破壊による種の絶滅問題
・食文化・生活習慣の違いから生まれる争い
・食資源の争奪
・不適切な肥料による農薬の混入
・食品製造工程の不良による人体に有害な食品の流通
・狂牛病のような飼料に絡む問題
・鳥インフルエンザのようなウィルスが絡む問題
・遺伝子組み換え作物のような自然の摂理への介入の是非

 

2. 旧約聖書では

旧約聖書の記述を絶対視するのは問題としても、食に関して何が書かれているかを振り返ってみることは価値あることと思います。

 

2.1 創世記では

(1) 第一章末尾には次のように書かれています。

「わたしは全地のおもてにある種をもつすべての草と、種のある実を結ぶすべての木とをあなた方に与える。これはあなた方の食物になるであろう。また地のすべての獣、空のすべての鳥、地に這うすべてのもの、すなわち命あるものには、食物としてすべての青草を与える。 創世記より」

字面通りに受け取れば、種(たね)から生える草類と、すべての木の実が人の食料なのです。地を這うけもの、空を飛ぶ鳥、海や川の魚、虫などは人の食料には挙げていません。もちろん人が人を食べることなど問題外です。創世記のこの章の記述を忠実に守れば菜食するしかありません。これでは草が生えない寒冷な地や砂漠の地、実のなる木々が育たない地域には人が住めなくなります。

(2) 第四章前半には次のような内容の記述があります。

アダムの子のカイン(兄で耕作者)とアベル(弟で牧畜者)が初めての収穫を神に捧げた時の出来事を述べています。理由は不明ですが、神はアベルの捧げものを”よし”とします。これを不満としたか、カインはアベルを殺してしまいます。神は子羊の捧げ物を穀物の捧げ物より美味としたのではなく、神への忠誠心の差を評したのかもしれませんが、創世記の記述からは判断できません。いずれにしても、神への捧げ物についてであり、人の食べる物のことではありません。

 

2.2 レビ記では

レビ記の第11章ではイスラエルの人々が食してよいものと、食してはならないものを示しています。なお、植物や木の実・果物については、創世記に書かれているのでレビ記に記述はありません。

(1) けもの場合

ひづめが分かれているほか、いったん食べたものを反芻するけものは食べられます。反芻するけものは草食動物です。したがって蹄が1つのラクダや兎などは食べられません。また、豚の蹄が分かれていますが反芻しないので食べることはできません。

(2) 鳥類

はげわし、とび、はやぶさの類、カラスの類、ダチョウ、よたか、かもめ、鷹の類、ふくろう、鵜、みみずく、ペリカン、こうのとり、さぎ類、こうもりなどは食べてはなりません。ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウ、キジなどの家禽類は食べることができます。

(3) 昆虫

イナゴ類を除き、羽をもち、かつ四足で歩く生き物はたべられません。

(4) 魚などの水中生物

ヒレとウロコのあるものは食べられます。ヒレとウロコのないもの、貝類やエビ類やタコ類は食へてはいけないのです。

 

2.3 屠殺方法など

・定められた屠殺方法によらねばなりません。
・すでに死んでいる動物を食べることはできません。
・正しい屠殺方法によらない動物は食べられません。
・母親の乳とその子の肉とを材料にした料理は禁じられます。
・母親からとったミルクと子の肉を使った料理も同時には摂れません。その延長線上には、肉料理と乳製品をつかった料理とは同時には摂れません。間に時間を置かねばなりません。

 

3. 宗教と食べ物

(1) 食は大切な行為

食は人が生きるための大切な行為なので、どの宗教でも戒律があります。信仰の強さや神への忠誠の度合を示すものとも考えられます。食も修業の一つとも考えられます。

(2) 地域依存

人は住む地域の状況に影響されます。農作物が育たない乾燥した地域では農産物を食料にすることができません。海辺や川辺に住む人々は魚が主体になりますし、けものの豊富な地域では肉食が主体になることは避けられません。

(3) 特定の動物

それぞれの宗教で忌むべき動物や崇めるべき動物があります。これらの動物は食の対象としては制限が課されるでしょう。

 

4. まとめに代えて 食生活へのヒント

人にとって食は大切なことですが個人で閉じる問題ではありません。人とのかかわりもあるのです。宗教上の食の戒律は一例にすぎません。食は、国家、地方自治体、企業、学校、家庭などの単位で、活力の源泉となり、思想や文化に影響し、経済活動に影響し、人間関係をも左右するからです。今後は、国家や企業も個人の食を大切にするようになってほしいものです。

(1) 人の尊厳を保つ食生活

何をどう調理して食すかは、人間らしい精神と肉体を育成し、それら保持し発展させるために大切なことです。

(2) 家庭における食生活

こどもは人間としての成長過程にあることから、大人が食の環境を整えてやる必要があります。その土台となるのは家庭での食生活です。食することの意味、食材そのものへの感謝のほか、食材を作る人や供給するひと、調理する人への感謝、食する場の雰囲気などもを大切です。

(3) 資源保護と民族固有の食文化の尊重

食文化には民族の歴史がかかわっています。安易に食文化の改変を各民族に求めるべきではありません。しかし乱獲による食資源の枯渇も避けねばなりません。絶滅の恐れのあるものに対する商業目的の捕獲は制限すべきです。

(4) 牛肉問題

肉牛の飼育には多量の餌料が必要です。広大な牧場か、人工飼料、飼料作物を栽培する農地が必要です。

(5) 遺伝子組み換え作物

自然の摂理を踏みにじる類の遺伝子組み換え作物の生産や流通には慎重であるべきです。特定企業の製品(種・肥料・消毒薬など)に農家を囲い込むような製品の流通には慎重であるべきです。

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カテゴリ: その他

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