土星の衛星に生命体が存在!?エンケラドスに熱水活動の証拠を発見
地球外生命体の存在については、UFOの目撃談からアメリカのNASA(米航空宇宙局)の発表、各種科学誌の見解などを通じて、長年議論されてきてはいるものの、未だ明確には断定し切れていないテーマのひとつです。地球に人類が存在するように、地球外生命体の可能性は否定できないものなのですが、先頃その足がかりとなるような発表がなされました。
きっかけは2005年NASAの探査
今回の発表のきっかけとなった出来事は、2005年にNASAの探査機が撮影した1枚の写真でした。地球外生命体の調査は、近年太陽からの距離が地球に比較的近い金星や火星を中心におこなわれてきたのですが、2005年にNASAが撮影に成功したのは、土星の衛星のひとつであるエンケラドスの南極付近から噴き出している「氷の粒子」でした。ここで科学者が立てた仮説が、「ひょっとするとエンケラドスの内部には熱が存在して、氷が溶け出しているのではないか」ということでした。従来の考え方の中では、金星や火星は太陽からの距離は地球に近いものの、生命誕生に必要な「熱」「水」「有機物」が発見できていなかったのです。それらの必要要素のうちのひとつ、「熱」がエンケラドスに存在するならば、生命体が存在する可能性が俄然高まる、というのです。
宇宙空間には存在しない水晶の成分「シリカ」
当時のNASAの調査では、噴出物に探査機を投入し、「シリカ」という宇宙空間には存在しない水晶の成分を検出することには成功したものの、「氷の粒子が噴き出しているメカニズム」を解明することはできませんでした。ところが先日、2人の若い日本人科学者(東京大学准教授の関根康人氏と海洋研究開発機構の渋谷岳造氏。共に30代)がメカニズムの解明に挑み、3年かけて「エンケラドスの地下に海が存在して、海面から熱水が噴き出している」ということを証明して見せたのです。「熱」に加えて「水」の存在を証明できたことで、生命体存在の可能性は一気に高まった、といえそうです。
深海での熱水調査がカギ
この研究は、前述の日本人科学者が「シリカが深海の熱水のような環境でできるのではないか」という点に着目して調査した結果得られた結論とのことで、日本が30年以上かけておこなってきていた深海の熱水調査が、宇宙での地球外生命体の検証に活用できたもの、といえます。関根准教授は、「生命か、生命に非常に近い機能を持った生物のような物が存在していてもおかしくはない」といった主旨の発言をしています。生命誕生の残る1要素、「有機物」については、NASAをはじめ研究は継続しておこなわれていますが、日本でも「宇宙空間の微粒子を直接採取しよう」という独自のプロジェクトが動き出している、とのことです(JAXA筑波宇宙センターの「たんぽぽ計画」)。いよいよ地球外生命体の謎の解明に、科学技術と時代とが追いついてきています。今後の展開から目が離せません。