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種類や階級が異なれば姿形も変わる?!日本の天狗の不思議な世界

羽黒山参道杉並木
 
平安時代から日本の歴史に登場する天狗ですが、それ以降様々な天狗の姿が明らかになっていくことになります。
鬼もそうですが、時代の移り変わりによって天狗の姿や種類、性格なども変化していくようです。中国の天狗は轟音を立てて空を流れる流星のようなものであり、そのかたちは犬のような動物の姿をしていました。しかし平安時代以降に登場する日本の天狗はまさに種類豊富、その姿もいろいろです。そういった日本の天狗にはどんなものがあるのか、見てみることにしましょう。

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大天狗と小天狗

共に種類豊富な天狗と鬼とで大きく異なる点は、天狗には位階があるということです。
まず天狗には「大天狗」と「小天狗」がいます。

大天狗は、天狗の中で最も強い神通力を持っているとされるもの。大天狗は神もしくは神に近い存在として認識され、善悪を併せ持った畏敬の対象ともなりました。
その姿は身長が高く、長く高い鼻の赤ら顔であり、いわゆる「鼻高天狗」という人間に近い顔かたちをしています。背中には翼があって空を飛翔し、手には大風を巻き起こす大きな葉団扇(はうちわ)を持ち、一本歯の高下駄をはいています。
優れた力を持った僧や修験者などが死後に大天狗になると言われ、怨霊で有名な崇徳上皇や修験者の元祖とされる超人であった役小角も大天狗になったと、後世には言われるようになりました。江戸時代には日本には四十八天狗という、48人の大天狗が密教系の『天狗経』という秘経に登場し、人々に知られるようになっていきます。

一方で、大天狗よりも位の低い天狗が小天狗です。鼻はおそろしく長く高いが人間に近い顔をした大天狗とは異なり、鳥の顔かたちをした「烏天狗」「木の葉天狗」というものがいて、これらが小天狗とされました。

 

烏天狗やその他の天狗たち

「烏天狗」は大天狗に比べて身長は低く、猛禽類の鳥のような顔で、嘴(くちばし)があり背中には羽をはやして空を飛びます。手には僧が山野を行くとき身を守るという錫杖(しゃくじょう)を持ち、それを武器とします。
実は大天狗(鼻高天狗)よりも、この烏天狗の方が天狗のイメージとしては古いものなのだそうで、顔以外の姿かたち服装は山岳修験者や山の民がモデルとなって出来上がっていきました。
名前は「カラス」ですが、顔は猛禽類の「タカ」に近く、天狗は鷹の姿をした妖怪であるという考え方がそのイメージを形づくったようです。

「木の葉天狗」は江戸時代の文献に登場する天狗であり、一般的に烏天狗に近い姿かたちをしているとされていますが、文献によってはトビの翼を持った大きな鳥のような姿や、白狼(はくろう)と呼ばれる老いたオオカミが天狗になったものなど、様々な姿で登場しています。

女性の天狗である「女天狗」もいます。江戸時代の『和漢三才図絵』では神話のスサノオの吐く猛気から生まれた女神である「天逆毎(あまのざこ)」は天狗だとし、また『平家物語』の異本である『源平盛衰記』には、驕慢な性格の尼法師が背中に翼をはやした「尼天狗」になるという話が載っています。

地位が最も低い天狗としては、「狗賓(ぐひん)」というものがいます。狗賓は大天狗、小天狗が名高い霊山を住まいとしているのに比べ、名もない山の奥に棲んでいるとされています。その姿はオオカミのような姿をしており、山岳信仰の土俗神や山の神の使者とされ山を守る存在とも言われています。

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