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大天狗現れる!強大な力を持ち始めた南北朝時代の天狗たちとは?

天狗
 
平安時代の天狗、今昔物語に登場する天狗たちは、一定の神通力は持ちながらも、結局は仏法の力で調伏や改心させられてしまう物の怪でした。しかし時代が進んで行くと、天狗はもっと強力な力を持った存在へと進化していきます。そう、大天狗の登場です。

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貴族政治の時代であった平安時代から、武家が政治の中心となる平安末期から鎌倉時代、南北朝時代へと進むにつれ、平家物語や太平記といった軍記物が盛んになってきます。そのなかで天狗たちは、その前の時代からは比べ物にならないほど強い力を持った存在として描かれていきます。

そもそも天狗というのは、古来より動乱や天変地異を招くものとされていたのですから、まさに太平の貴族政治の時代から動乱の武士の時代へと移って行ったことにより、その活動の舞台を広げて行ったのでした。

 

太平記に現れた大天狗たち

『太平記』は14世紀の南北朝の時代を舞台に、後醍醐天皇の即位から鎌倉幕府の滅亡、建武の新政とその崩壊、南北朝への分裂から室町幕府の初期までの約50年間を描いた軍記物語です。この太平記には強い力を備えた天狗たちがたびたび登場して、もっぱら朝廷の味方をする存在として描かれています。

例えば「仁和寺の天狗評定」というお話があります。

1348年に起こった大阪の四條畷(しじょうなわて)の戦いは、南朝方の楠木正行(まさつら、楠木正成の長男)と北朝方の足利尊氏の家臣である高師直との間の戦いでした。激戦の末、楠木正行の軍は圧倒的な数の足利軍の前に敗れてしまうのですが、この戦いがあった年のある日、ひとりの禅僧が仁和寺の六本杉で月の出始めた時刻に休憩を取っていると、その六本杉の上の方からなにやら声が聞こえて来ます。
誰の声かと見上げてみると、その杉の木に大天狗たちが集まり、なにやら相談しているのでした。

 

死んだはずの有力者たちが天狗に

そこに集まっていた天狗とは、醍醐天皇の皇子で建武の新政のときに征夷大将軍となって活躍しながらも後醍醐天皇と反目して捕らえられ、足利方に身柄を渡されて鎌倉に幽閉され殺害された大塔宮護良親王をはじめ、後醍醐天皇の外戚である峰僧正や奈良の智教上人、浄土宗の忠円僧正といったかつての高僧たちでした。
この天狗たちが酒盛りをしながら、「天下が混乱し、奢り高ぶる足利家になんとか一泡ふかせられないものか」と相談をしているのです。

やがて忠円僧正の天狗が「良い方法を思いついた」と提案します。足利尊氏の弟である直義の奥方に護良親王が宿って男子として生まれ出る。足利家に縁のある夢窓国師の弟子に峰僧正が取り憑いて、政治に口をはさませる。武将の上杉・畠山に智教上人が取り憑き、高師直・師泰の兄弟には忠円僧正が取り憑いて、お互いを争わせる。「そうすれば足利尊氏と直義の兄弟は必ず争うことになるでしょう」

その後、「観応の擾乱」という足利政権内の抗争が起こり、足利直義と高師直の不仲から師直一族は滅亡、やがて直義も尊氏によって暗殺されてしまいます。

このように南北朝時代になると、日本の政治や動乱に大きな影響力を発揮する神通力を持った大天狗たちが登場して来たのでした。

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