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龍神に会いに行く(7)箱根の金龍、青龍、白龍と九頭龍

龍の伝説

龍には金龍や青龍、黒龍など、いろいろな色があるのをご存知でしょうか?
これは基本的には中国の「五行思想」という、この世界にある万物を5つの基本要素(エレメント)で考える古代の自然思想から来ていると考えられています。

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5つの基本要素(エレメント)とは?

5つの基本要素とは「木」「火」「土」「金」「水」で、これに「日(太陽)」と「月」を加えると一週間の曜日になりますね。
それぞれには色や方角などがあてられていて、木は「青(緑)」で東、火は「紅(赤)」で南、土は「黄」で中央、金は「白」で西、水は「玄(黒)」で北になります。

 
ですから中国では中央で土=大地を治める黄色が最も高貴な色であり、黄龍が皇帝の権威を示す龍とされました。
また方角を司る「四神」では、東を青龍が護っています。

 
つまり一般的には5色の龍がいると考えられて来たわけですが、このうち3色の龍神に会える場所が、それもとても著名な観光地にあるのです。

 

 

箱根神社と九頭龍神社

箱根は、首都圏に近い最もポピュラーな観光地と言えます。
昨年の観光客数はおよそ2千百万人にものぼり、宿泊・日帰りとも人気で外国人観光客も昨年は過去最高となったそうです。

 
この箱根観光の中心は芦ノ湖で、その湖畔に「箱根神社」があり、境内には龍を祀る「九頭龍神社(新宮)」があります。
箱根は古代から山岳信仰の中心地で、特に芦ノ湖を望む駒ヶ岳(標高1356m)の山頂から箱根の最高峰である神山(標高1438m)を遥拝する祭祀が行われてきました。
その起源はとても古く、神武天皇から5代目の孝昭天皇の時代(紀元前5世紀か6世紀頃)には「聖占上人」という人が神仙宮を開いて神山を祀ったとされ、現在、駒ヶ岳の山頂には「箱根元宮」が再建されています。

 
九頭竜神社は、現在は箱根神社の境内に新宮がありますが、その本宮は境外社として芦ノ湖畔の離れた場所にあります。
まさに箱根神社の奥宮と言ってもいいかも知れない位置にあり、その歴史も箱根神社と同じ古さとされています。

 

 

箱根の九頭龍伝説

箱根の九頭龍神社創建の伝承は、このようなものです。

 
日本全国の霊場を巡っていた「万巻上人(まんがんしょうにん)」は、奈良時代の757年(天平宝字元年)に朝廷の命によって箱根の山岳信仰を束ねるために箱根山に入り、駒ヶ岳で3年間修行の後、箱根大神の神託を得て「箱根大権現(三所権現)」を祀る「里宮(箱根神社)」を創建します。

 
その頃、芦ノ湖には9つの頭を持った毒龍が棲んでいて人々を苦しめ、里人は人身御供を差し出す習慣があったと言います。
そこで万巻上人は仏に祈り毒龍に仏法を説いたところ、龍が出現したので鉄鎖の法で湖底の白檀の木に毒龍を縛り付け、更に仏法を説き続けると、龍はもう悪事をせずにこの地の守り神になると約束しました。
上人は龍の約束が本物であるとわかり、「九頭龍大明神」として祀ったということです。

 

 

3色の龍に出会う

万巻上人と九頭龍の伝説は、悪龍が仏法で悔い改め善龍となって人々を護り祀られるという典型的な仏教の龍のお話ですが、この九頭龍神社には実は3色の龍が祀られているのです。

 
まず九頭龍神社本宮の龍ですが、名前のとおりの九頭龍ではなく金龍と青龍の2体の龍なのだそうです。
その姿と色は、金竜は五行の白、青龍は五行の青で描かれています。
これは九頭竜川の黒龍が九頭龍と呼ばれるようになったように、金と青の龍が九頭龍と呼ばれるようになったということでしょうか。

 

 

九頭龍神社本宮の「白龍神社」

更に、九頭龍神社本宮には「白龍神社」があります。
この白龍は神社の由緒によると、その昔に箱根権現で祀られていた「白和龍王(しろわりゅうおう)」で、江戸時代まで「左鵲王(さじゃくおう)」と「右鵲王(うじゃくおう)」と呼ばれる神々と共にお祀りされていたのだそうです。

 
ちなみに左右の鵲王の「鵲」は「カササギ」という鳥のことですが、どんな神様であったのかは良くわかりません。
カササギはカラス科の一種で別名カチガラスとも呼ばれていますが、中国の七夕伝説では織姫と彦星の間をつなぐ架け橋の役目を担う鳥とされています。
またカササギではありませんが、「八咫烏(やたがらす)」は日本神話に登場する神の使いです。

 
それはともかく白龍は白蛇信仰を連想させますので、もしかしたら白和龍王はとても古くから箱根の山にいた龍蛇信仰の神様かも知れません。

 
このように箱根の九頭龍神社は3色の蛇神様に出会える、不思議に満ちた神社なのです。
 

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