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好き嫌いがはっきりしている妖怪・河童(2)金属・猿・鹿の角

カッパ

 

河童の好きな物と言えば、キュウリに相撲、そして「尻子玉」というものですが、そのほかにも人や牛馬を水中に引込むこと、人間の真似やいたずらも好き、人間の女性のお尻をなでるのも好き、などという話もあります。
それに対して嫌いな物もはっきりしているので、今回はそれをご紹介しましょう。

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河童が最も嫌うのは金属

河童が嫌う物のなかでも一番は「金属(金物)」です。金属のなかでも特に鉄を嫌うとされています。

 
どうしてかというとこれも諸説あるようなのですが、まず一般的に水に棲む妖怪・妖物は概ね金属を嫌うと言われます。これは世界各地でも共通した話のようで、古代より産鉄(製鉄)は水や燃料の木材を大量に必要とすることから、農耕にとって最も大切である水を汚し森林の消失によって洪水を起こすとされ、金属=鉄と農耕の水や治水とは対立するものと言われています。

 
実際に古代から中国や朝鮮半島では、製鉄による伐採で森林が消失していきました。
水神は農耕の神ですから、その眷属(けんぞく=その神の配下または関係するモノ・動物)やしもべである水の妖怪や妖物も、鉄などの金属を嫌うということのようです。水神として代表的な龍蛇も鉄を嫌いますし、龍の棲むと言われる泉や池などの水場で鉄製品を水に浸すのは禁忌とされています。

 

河童と鍛冶屋

河童には全国各地に「駒引き伝説」というものがあって、これは馬を水の中に引込もうとする河童を人間がこらしめ、もう決してそういうことはしないという証文を河童が人間に渡すといった話ですが、このとき河童をこらしめるために連れて行くのが金属のたくさんある鍛冶屋だという話があります。

 
また河童は人家の戸口にある鋤や鎌、軒下から吊るされた鉤(かぎ)を見て姿を消すとも言われていますから、よほど鉄製品が嫌いなのでしょう。鋤や鎌など、農耕には鉄製品が欠くことのできないものとなりますが、水の妖怪である河童はいつまでたっても鉄が苦手ということのようです。

 

 

河童は猿と鹿の角が嫌い

鉄などの金属のほかに河童が苦手なものといえば、「猿」と「鹿の角」です。
江戸中期の百科事典である「和漢三才図絵」では、河童はサルの類いの未確認動物に分類されているのに、なぜ同類かも知れない猿が嫌いなのでしょうか。

 

河童はなぜ猿が嫌いなのか?

はっきりとはわかっていませんが、猿を操る「猿曳き(猿回し)」が馬や馬主に祝いを述べて猿を舞わすことから、猿が馬の守り神と考えられ、先ほどの「駒引き伝説」のように水中に馬を引込もうとする河童と対立したという説があります。犬猿の仲ならぬ、河童と猿の仲になったというわけですね。河童はいつも相撲で猿に負けるから嫌いになった、という説もあるようです。

 

鹿の角が嫌いな理由はわかっていない

鹿の角がなぜ嫌いなのかについては、その由来がどうもよくわかりません。鹿は神の使いであり、そのことから鹿の角を苦手とするといった説があるようですが、理由としてはざっくりしすぎてもうひとつです。

 
そのほか、瓢箪やヘチマは水の中に引込もうとしてもすぐに浮いてしまうので嫌いです。主に東北地方などの東日本では河童を「みずち」と呼ぶことから、日本書紀の仁徳67年条のヒサゴ(瓢=ひょうたん)を水に投げ入れて「ミズチ(蛟)」を退治したという記述がその根拠とされることがありますが、日本書紀の「ミズチ(蛟)」は龍蛇のことで直接的には河童とは関係がないと思われます。

 
そのほかにも河童が嫌いな物としては、これを食べれば河童との相撲に勝てるという仏様に供える「仏飯」、盂蘭盆(うらぼん)の門火(かどび)を焚くときに用いる「おがら」という皮を剥いだ麻の茎など、仏教に関わる物も嫌います。人間の「唾」も嫌いで、唾を吐きかけると逃げるとも言われています。

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