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天狗再登場!時代を超えて平安時代に出現した日本の天狗とは?

平安時代 姫 女性
 
古代から続く長い日本の歴史のなかで、妖怪をはじめとした不思議な話や伝説が流行した3つの時代というのがどうやらあるようです。
それがいつかというと、ひとつは平安時代。およそ390年も続いたこの時代は、それ以前の奈良時代が唐風の文化を取り入れた時代であったのに比べ、「国風文化(くにぶりぶんか)」と言われる日本的な文化が発達し円熟したときでした。

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もうひとつの時代は江戸時代。こちらも約260年という長く続いた時代で、平和と鎖国によって日本独自の文化が発達し、そのなかで妖怪が大流行しました。

そして最後は、まさに現代ではないでしょうか。
この3つの時代に共通しているのは、平和が続き都市を中心とした文化が発達した時代であるということ。日本という地で妖怪が活躍する下地や時代背景は、どうもそんなところにあるのかも知れません。
日本書紀に初めてわずかに記され、いつしか消えてしまったかのように思えた天狗があらためて世の中に再登場するのが、まさに第1の妖怪や伝説の流行の時代である平安時代なのです。

 

宇津保物語にこつ然と現れた天狗

日本書紀に記された天狗は、いま私たちがイメージする天狗とはまったく違う、天を流れる流星のようなものでした。そしてそれ以降、天狗はまったく現れないのです。
奈良時代を舞台に、山伏の原点とされ鬼を従えた超人として描かれる役小角(えんのおづぬ)は『日本霊異記』に記述されていますが、天狗はこの時代には登場しません。
日本書紀の天狗の記述が637年のことで奈良時代が794年までですから、150年あまりも天狗は表舞台には出てこないのです。天狗はもしかしたら日本にいなかったのか、とも思える長い空白期間が続きました。

それが平安時代になり、こつ然と天狗が再登場します。天狗が語られたのは、『宇津保物語』という平安時代の中頃に書かれたとされる長編物語。この物語は、それ以前に書かれた『竹取物語』の不思議なストーリー性の性格を受け継いだ、日本最古の長編物語とされています。

 

不思議な琴の音を奏でる天狗

遣唐使の清原俊蔭は、唐に渡る途中に船が難破して波斯国(ペルシア)に漂着し、天女から琴の秘技を伝えられ帰国したあと、娘にその琴の技を伝えて亡くなります。『宇津保物語』はその娘と琴の秘技を軸として、京の都と朝廷を舞台に展開する物語です。
この『宇津保物語』の巻の1「俊蔭」に天狗が出てくるのですが、それはこんなお話です。

帝(みかど)が北野天満宮に外出する日、その北の山のあたりをご覧になっているとき、山から琴の調べが流れて来ます。お供の右近衛大将が兄である右大臣に「北の山から琴の音のように響きわたる調べが聞こえて来ますが、どうも普通の琴の音ではないような気がしますので、近くに行って聞いてみたい」と言いますと、右大臣は「あんなに遥か遠くの山で誰が奏でているというのだ。まさか天狗の仕業ではないだろうな。とにかく急いで行こう」と応えました。
右近衛大将は「仙人などもこういうことをするといいますから、私がひとりで行ってきます」と山まで調べに行くと、その不思議な音は実は長く出会うことのなかった妻である清原俊蔭の娘とその子が奏でる琴の調べでした。

天狗かと思ったのが実は違ったわけです。ですからまだ天狗ははっきりと姿を現してはいませんが、山の中で不思議な音を出し人間を惑わすのが天狗の仕業かも知れないとして、日本書紀の流星とはまったく違う山に棲む天狗という存在が、私たちの前に再登場して来たのでした。

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