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浦島太郎のむかし話と日本書紀・丹後国風土記の浦島伝説

浦島太郎
 
助けた亀に乗って龍宮に行く「浦島太郎の伝説」は、誰でもご存知の物語だと思います。
一般的に知られているストーリーは、浜で子供たちにいじめられている亀を漁師の浦島太郎が助け、そのお礼に亀は浦島太郎を海中の龍宮城に連れて行きます。そこでは乙姫に歓待されますが、やがて浦島太郎が帰りたいと言うと「決して開けてはいけない」という玉手箱を渡されるのです。再び亀に連れられ、もとの浜に帰ると誰も知った人がいません。浦島太郎が開けてはいけない玉手箱を開けると、中から煙が立ち昇り、煙を浴びた浦島太郎は老人になってしまいました。龍宮城で過ごした日にちはわずかでしたが、人間の世界では長い年月が経っていたのです。
さて、この浦島太郎伝説に登場する「龍宮城」とは、どこから来た(どこにあった?)ものだったのでしょうか。

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日本書紀・丹後国風土記に登場する浦島伝説とは

浦島太郎の伝説が記されている最も古い書物は、『日本書紀』と『丹後国風土記』です。
日本書紀の完成は720年で、丹後国風土記も8世紀にはできていたと考えられていますから、ほぼ同じ頃に成立しています。
ただし日本書紀と丹後国風土記の浦島伝説は、一般的に知られる物語とは多少異なっているのです。

日本書紀では、丹波(丹後)の余社郡(現在の京都府与謝郡/古代は丹後も含まれ713年に分離)の浦嶋子(浦島太郎)が舟に乗って釣りをしていると、大亀を捕らえます。するとこの亀はたちまち女性の姿になったので、浦嶋子はこの女性を妻にします。浦嶋子と女性は海中の「蓬莱山(ほうらいさん/とこよのくに)」に行き、各地を巡って仙人たちに会います。

丹後国風土記でも、浦嶋子が亀を捕らえてその亀が女性となるのは日本書紀と同じです。この女性は浦嶋子に会いにやって来たと言います。そして海中の「蓬莱山」に行くのですが、女性は「亀比売(ひめ)」という仙界の娘(神女)で、浦嶋子は亀比売と夫婦となり3年を過ごします。しかし故郷に帰りたくなった浦嶋子は亀比売と別れることを決意すると、亀比売は「ここに戻りたいなら決して開けてはいけない」玉匣(はこ)を渡します。あとは一般的な浦島太郎のストーリーと同様ですが、亀比売と暮らした3年は300年以上も経過していたのでした。

このように日本書紀と丹後国風土記では、浦嶋子は「蓬莱山」に行くのであって「龍宮」ではありませんし、乙姫も龍神の娘ではなく亀比売という神女です。

 

龍神の娘ではなく亀の姫だった?

日本書紀と丹後国風土記に出て来る「蓬莱山」は「とこよのくに=常世の国」という読みがされています。「常世の国」とは、古代の日本で信仰された海の彼方にあるとされる、理想郷とも考えられる異世界のことです。これに紀元3世紀頃に中国の山東半島を中心に起こった神仙思想の、東の海の彼方にあるという「蓬莱山」の文字があてられています。
どちらも「不老不死」や「永久不変」といった考え方がある場所ですから、これが浦島太郎伝説の大きなモチーフとなっている訳です。

それでは、この「常世の国」がどうして「龍宮」になったのでしょうか?
実は浦島太郎の物語が現在の一般に知られるような内容に近いかたちで語られるのは、中世の「御伽草子」(鎌倉時代末から室町時代、江戸時代にかけて成立)なのだそうです。ここではじめて、助けた亀の恩返し、龍宮城、玉手箱といった主要な要素がでてきます。ただ浦島太郎と竜宮城で暮らす姫はやはり亀の化身で、後に龍神の娘または妻とされる乙姫ではありません。ちなみに御伽草子の浦島太郎物語では、最後に玉手箱を開けて老人となった浦島太郎は鶴となって蓬莱山へと飛び去り、亀の姫も蓬莱山へ行ってふたりは夫婦となります。鶴と亀の夫婦が長寿を示しているということですね。

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