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妖怪ブームのルーツ!江戸の絵師・鳥山石燕が妖怪画集で描く鬼たち

鬼
 
古い書物で妖怪を記したものというと、中国の『山海経(せんがいきょう)』というものがあります。この書物は中国古代の地誌(地理上の様々な事柄を記した書物)で、紀元前403年から221年の戦国時代から紀元後220年までの漢の時代にかけて書かれたもの。ただ地誌と言っても現代のそれとは異なり、古代の中国人がその当時に認識していた不思議な事柄の記述が多く、そのなかには妖怪や神、奇妙な生きものなどが数多く記されています。その点で山海経は、東洋の妖怪の原典とも言えるのかも知れません。

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山海経には例えば「九尾狐」や「天狗」など、日本で知られる妖怪にもつながるものもあります。ただそこに描かれた天狗は蛇をくわえた大きな犬かネコのような動物の姿で、どうも日本の天狗とは違うもののようですが。
この山海経は平安時代には日本でも読まれていて、江戸時代になると出版物として流通していたそうです。江戸の妖怪大流行の火付け役である鳥山石燕が描いた妖怪画集にも、この山海経を原典として描かれた妖怪もあるのだそうです。

 

鳥山石燕の鬼は19種類もある

鳥山石燕が描いた200種類もの妖怪には、この山海経をルーツとしたもののほか、日本の歴史や物語、伝説の中に登場して来たもの、そして石燕自身の想像力によって創作されたものもあるということです。

石燕の妖怪画集は『画図百鬼夜行』『今昔画図続百鬼』『今昔百鬼拾遺』『百器徒然袋』と4冊があり、そのなかで鬼の名前が付いたものや鬼と関係する妖怪は19種類ほどあります。200種類の妖怪のなかで、全体の約10%が鬼というわけですね。

例えばそのものずばり「鬼」と紹介されている絵では、「世に丑寅(うしとら)の方を鬼門という。いま鬼の形を画くには、頭に牛角をいただき腰に虎皮をまとう。これ丑と寅との二つを合わせてこの形を成せりといへり」と石燕の解説が付いていて、現代にまで続く頭に2本の角、トラのパンツをはいた鬼の姿が描かれています。

 

鳥山石燕の描いた不思議な鬼たち

平安時代から始まる物語や伝説に登場する鬼では「黒塚(安達が原の鬼婆)」や「道成寺鐘(安珍清姫伝説)」「紅葉狩(紅葉伝説)」なども登場し、本来は鬼を追い払う役のはずがいつしか鬼にされてしまった四つ目の「方相氏」も鬼の妖怪として登場します。

そのほかに鬼の名が付いた不思議な妖怪もいて、例えば「百々目鬼(どどめき)」は長い腕に目がたくさん付いている女妖怪。いつも他人の銭を盗んでいたので、腕に百個の鳥の目ができてしまったのだそうです。昔は銭のことを丸く穴が開いていることから「鳥目(ちょうもく)」と呼んでいて、どうもその鳥目から石燕が創作した銭を盗む妖怪のようです。

また「髪鬼(かみおに)」は全身髪の毛だらけの鬼。女性の怨みの念や嫉妬心が頭髪にこもって、その髪がいくら切っても際限なく長く伸びる妖怪で、人間の髪の毛には不思議な力があるとされることから、これも石燕が創作した妖怪ということです。

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