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空気と風の精霊シルフ(シルフィード)とエアリエルとは

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1997年に公開されたリュック・ベンソン監督のSF映画に、「フィフス・エレメント」というのがありました。アメリカのSFとはひと味違う、ちょっとおしゃれで変なこの映画、ブルース・ウィルスと妖精のようにキュートなミラ・ジョヴォヴィッチが主演で、結構好きな作品なのですが、タイトル名にあるように5番目のエレメントというのがキーワードになっています。

つまり、4つのエレメント(元素)に更に5番目のエレメントを探し出して加えれば地球が救えるということなのですが、4つのエレメントとはまさに「四大精霊」のもととなる「四大元素」の火、水、空気(風)、土というわけです。

それでは5番目のエレメントとは? その答えは作品を観ていただければと思いますが、エレメントでできているのがエレメンタル(精霊・妖精)というのがヒントです。

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パラケルススが命名した空気の精霊

さて今回は、3番目のエレメンタルである「シルフ(シルフィード)」です。
シルフは空気と風の精霊で、その名称はギリシャ語の「蝶」または「蛾」を意味する「シルフェ」に由来しているそうです。ですからその姿はきわめて小柄で羽を持っており、またほとんど透き通っています。羽を持ってひらひらと飛ぶ小さな妖精というイメージに、シルフはまさにぴったりというわけです。その棲家は森のなかの空気で、その透明の姿から普段は人間には見えないのだとか。

このようにきわめて精霊や妖精らしい存在のシルフですが、火の精霊「サラマンダー」が小型のドラゴン、水の精霊「ウンディーネ」がギリシャの精霊神の「ニンフ」とそれぞれ古代ギリシャに源流を持っているのとは異なり、じつはシルフまたはシルフィードという精霊や妖精には源流がないのだそうです。

というのも、空気と風の精霊であるシルフという名称は、四大精霊を提唱した16世紀のスイス出身の錬金術師であり医師、化学者あるいは神秘思想家のパラケルススが造ったものなのです。

 

天使か悪魔か?空気の精霊エアリエルの源流

こういったシルフのような空気や風の精霊は「エアリエル」と呼ばれていて、17世紀初めに初演されたシェイクスピアの劇「テンペスト」に登場し、人びとに知られるようになりました。

テンペストとエアリエルについては、また別の記事でご紹介しようかと思いますが、「エアリエル(Ariel)」という名称はまさに「空気」の「エアー(air)」や「大気の、気体の」の「エアリアル(aerial)」を連想させるものです。

ですが、この「エアリエル」または「アリエル」とは、もともとはヘブライ語で「神のライオン」という意味だそうで、イスラエルの首都エルサレムの別称でもあります。旧約聖書やその外典などでは天使のひとりの名前として記され、パラケルススと同時代の16世紀から17世紀のイギリスの劇作家トマス・ヘイウッドの長編詩「祝福された天使たちの位階」では、エアリエルは7人の天使長のうちのひとりとされています。

また、コプト教(紀元前1世紀頃からエジプトで始まったキリスト教)の古代文書やグノーシス主義(1世紀に生まれ地中海世界で勢力のあった二元論思想・宗教)では、闇の世界に精霊を造ったライオンの頭を持つ世界の支配者「ヤルダバオト」につながり、17世紀の詩人ミルトンの叙事詩「失楽園」ではサタンとともに反逆した堕天使とされ、中世ヨーロッパでは大気のなかに棲む悪魔ともされていました。このようにエアリエルは、古代からの時の流れのなかで天使から堕天使そして悪魔の一員とも考えられていたのです。

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