魂が再生する転生のかたちとは(1)先住民に伝わる生まれ変わり
「輪廻転生(りんねてんしょう)」と呼ばれる生命や魂の転生には、「再生型」「輪廻型」「リインカーネーション型」の3つの種類があるそうです。
このうちの「再生型」はアフリカの諸部族や中東の部族、パプアニューギニアやインドネシア、ネイティブアメリカンやオーストラリアの先住民など、古い歴史を持つ小部族社会に多く見られるようです。
特にこれら古代からの社会文化や生活スタイルを近代まで持ち続けてきた部族社会の転生の考え方は、人類の古い記憶をいまに伝えているのかも知れません。
オーストラリア先住民に伝わる生まれ変わりとは
例えば、オーストラリアの先住民(アボリジニ)であるユーアライ族には、成人にならずに死んだ子供の魂は再生して、同じ母親かまたは別の女性から再び生まれてくると信じられています。
アボリジニは、およそ5万年前かもっと古くは12万年以上前にオーストラリア大陸に上陸し、氷河期を経て孤立する大陸となったオーストラリアに居住し続けた人びとです。
ユーアライ族の信じるところでは、老婦と結婚した若い男性は前世にその女性が好きで、生まれ変わってから結婚したのだといいます。
また同じくオーストラリアの先住民のアルリッヤ族では、死んだ人の魂は北方の島へと行き、しばらくして黒雲とともに帰って来て息子や孫の身体のなかに入り、その成長を助けるそうです。
そのほか、ウンマトラ族やカイエティシュ族、マラ族やヌラクン族など多くの部族では、人が死んで葬送の儀式を終えると、その魂は父祖の地に帰ってしばらく留まり、やがて再生するとされています。その際、再生のたびに性別を変えるともいいます。
魂の再生は遥か古代からいまに伝わる考え方なのか?
ニューギニアのトロブリアンド諸島の人たちの再生の考え方では、人の魂(バロマ)が年老いると蛇のように自分の皮を脱ぎ捨てて「ワイワイア」という精霊の胎児(精霊児)になります。
このワイワイアは女性の魂(バロマ)には見ることができ、その女性のバロマがワイワイアを誰かの女性の子宮の中に入れると、その女性は妊娠して子供を産むのだそうです。
このように、生まれ変わり(再生)は勝手に行われるのではなく、世界のことわりや誰かの意思によって引き起こされます。
オーストラリア先住民やパプアニューギニアの人びとの再生型の生まれ変わりは、祖先信仰と結びついたものですが、祖霊を敬うとともにその祖霊の魂が息子や孫と融合したり、あるいは新たな生命の魂として生まれるなど、魂は融合したり分裂したりするのです。
キリスト教などの一神教では、魂は神が与えたもので融合や分裂などによる再生は行いません。その点からも、宗教以前のとても古い転生の考え方なのかも知れません。これらの再生による生まれ変わりが、何千年何万年も前の遥か古代からのとても古い転生の考え方を、いまに伝えているということなのでしょうか。