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アヌンナキの神々による人類創造の物語~シュメール神話

エクトプラズム
 
旧約聖書では、人間は神の息吹と土から生みだされました。それではシュメールの神話では、人間はどうやって生まれたのでしょうか。シュメール神話にも人類創造の物語があり、それはこんなお話です。

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人間を造り出す知恵を授けた深淵を司る神エンキ

日本の八百万の神のように二千もの神々がいるシュメールの神の世界では、上位の神に対して小さき神々と呼ばれる下位の神というものもいます。天空の神アン、そして地上における最高神で大気を司るエンリル、そのほか全部で7柱の「アヌンナキ」と呼ばれる「地上と冥界の審判者」「運命を定める神々」が筆頭の上位神だとすると、下位の神々は食事を作る、掃除をするなどの日常の仕事から、運河を掘って用水路を確保し神々の住む神殿を造るなどまで様々な労働に従事していました。

あるとき、その下位の神々たちが、もうこんなに働かされるのは嫌だとストライキを起こします。そこで原初の女神であり母なる海の神であるナンムは、息子のエンキの知恵を借りることにしました。

エンキは、アブズと呼ばれる深淵を司る知恵の神です。アブズは地下にある淡水の海で、そこは知恵の深淵でもあり同時に水が生みだす豊穣を司る神でもあります。

さてナンムに解決策を問われたエンキは、小さき神々に代って労働に従事するものの創造を提案します。そこでナンムはエンキの指示により、アブズの肥沃な粘土を使って形を整え人間を造り出したのでした。

 

神に奉仕する存在として造り出された人間

こうしてエンキの知恵と深淵の持つ創造の力によって人間が創造されたのですが、その後エンキが催した祝宴で、酩酊した風の女神ニンリルがエンキと同等の力を持つことを競うために、人間を創造することを提案します。これにエンキは、その人間たちの運命を定めることを条件に提案を受けたのでした。

アブズの粘土でニンリルが造り出した6人の人間は、しかしいずれもどこかしらに欠陥があったのです。それでもエンキはそれぞれの人間たちに、様々な仕事に従事する運命を定めてあげました。

替わって今度はエンキが2人の人間を創造しますが、その人間は命が終わりに近いような身体のすべてが悪い存在でした。その後に続く物語についてはテキストに欠落部分が多く脈絡が判りづらいとのことで省略します。

このお話には、日本神話で海に流されたヒルコのエピソードになんとなく通じるものを感じますが、古代の神話にはこのような不可思議な創造・誕生のお話があるのです。

ともかくもシュメールの神話では、人間は下位の神々の代りとなって神に捧げる労働を担う存在として創造されたのでした。シュメール語の「シサ」は「正しい」という意味ですが、その本来の意味は「神々への奉仕や供え物を、規則通りに滞りなく行う」ということだったそうです。

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