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中世ヨーロッパで花開いたスコラ錬金術の功績

スコラ錬金術

紀元前のアレキサンドリアが発祥といわれている錬金術は、当初は「卑金属を貴金属に変える」という、物理的な金属加工分野での呼び名といっても過言ではないような位置付けでした。
それが中世ヨーロッパ以降のスコラ錬金術では、キリスト教の浸透とも相まって、その性格を大きく変貌させていきます。ここでは、中世ヨーロッパに花開いた、スコラ錬金術の功績について解説していきます。

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自然の復元にまで領域を広げた

キリスト教は、いうまでもなく典型的な「一神教」の宗教であり、人間を含む森羅万象はすべて「神」が作った、と定義されています。
この考え方を論理的な方法で突き詰めようとしたのが、中世ヨーロッパ時代のスコラ哲学なのですが、同時期に発展したスコラ錬金術でも、本家のスコラ哲学に呼応する形で、「自然の人工的な創造」について、論理的な根拠を積み上げて検証する、つまり「西欧的な科学的アプローチ」を、錬金術の世界に本格的に導入するという試みがなされていきます。

しかしこれは、それまで宗教の世界においての「神の領域」を、人間の手で再現せんとするようなアプローチであり、大きな反発も起こっています。

錬金術のカバー範囲が大きく広がった

とはいえスコラ錬金術の出現で、それまでの錬金術(アレキサンドリア錬金術と呼ばれていました)にはなかった領域にまで、錬金術のカバー範囲が広がったことも事実で、その後に登場することになる新たな錬金術にも、大きな影響を与えています。

人間を含めた「自然を再現する」という行為は、人間が対象である以上、単なる物理的なモノの製造にとどまらず、宗教的な概念や道徳、心理的な部分など、「卑金属を貴金属に変える」という限られた世界にはなかった領域にまで、探求の対象を広げることになりました。

トマス・アクィナスの功績

錬金術の文脈の中で語られている、ホムンクルスという「人造人間」は、フラスコの中で生成され、その中でしか生きられない、といった設定を持つものでしたが、これが現代における医学や組織の問題にも通じる、いわば普遍的な「人間の問題」をも包含している事象でした。

スコラ哲学を確立したとされているのは、中世ヨーロッパのイタリアの神学者、トマス・アクィナスですが、彼こそが錬金術に新たな側面を与え、スコラ錬金術をも確立した人物である、と考えられます。スコラ哲学以前には、古代ギリシャのアリストテレス哲学と、キリスト教哲学とは別の概念だったのですが、トマス・アクィナスの登場によってこれらは整合性をもって統合され、その影響が錬金術にもおよんだのです。

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カテゴリ: その他

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