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中世ヨーロッパの錬金術とヘルメス・トリスメギストスの思想


 
錬金術思想は、紀元前330年頃に建設されたとされる、古代アレクサンドリア(現在もエジプトに存在する都市で、カイロに次ぐエジプト第二の都市です)で誕生し、12世紀以降はヨーロッパにも伝わって、17世紀前後には、現代の錬金術のイメージができあがるほどの大流行を見せました。

その功績は、現代化学にも通じる偉大なものとして認識されていますが、錬金術のベースとなる思想は、ヘルメス・トリスメギストスというキーワードとともに誕生した、といっても過言ではありません。

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15~17世紀に行われた錬金術の検証

古代に誕生した錬金術の本格的な検証は、15~17世紀頃、錬金術がヨーロッパで大流行した時期におこなわれています。この時期以前の錬金術は、どちらかというと古い宗教や信仰をベースに、多分に観念的な要素を多く持った概念であったのですが、中世ヨーロッパ以降は、霊的観念的な部分のみならず、「卑金属を貴金属に変える」ための具体的物理的な研究や、錬金術のルーツとなる「モノの見方」の再検証が行われ、錬金術が体系的に整理されていった時代である、といえます。

 

宇宙全体は一つの有機体

中世ヨーロッパで再検証された錬金術の思想は「ヘルメス思想(またはヘルメス哲学)」と呼ばれ、そのルーツはギリシャ神話に登場する青年神ヘルメスが、エメラルド・タブレットに刻んだ碑文にまでさかのぼります。

ここには、錬金術の基本思想が書かれています。碑文によると、「原初的宇宙は、まず唯一の神が存在していたところから始まって、神から流出した霊によって作られたものである」、としています。宇宙全体が、実はひとつの有機体である、といったような世界観(厳密には宇宙観)です。

 

一は全なり、全は一なり

紀元前4世紀頃の哲学者であるアリストテレスは、「すべての物質は基本的にまず第一質料(原料のような概念です)ありきである」という、現代物理学と同じ見解を既に示していました。錬金術、ひいてはヘルメス思想の中では、この第一質料に相当するものを、「神」と考えたのです。

宇宙を含め、この世に存在しているものの源流はすべて神に行き着き、この唯一の質料を知ることが、物事の本質的なことを知ることになる、と考えました。これが、ヘルメスから受け継がれて、錬金術の世界を象徴しているという「一は全なり、全は一なり」というキーワードです。

この概念は、中心に霊的なもの=神を据えているがために、いわば地動説的な立場をとっています。錬金術のベースとなる考え方と、当時の物理的な学説(地動説)は連動していた、ということです。

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カテゴリ: その他

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