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今昔物語集こそ日本の天狗のルーツ?平安時代の都市伝説の中の天狗

平安時代 姫 女性
 
平安時代、京の都は様々な物の怪や妖怪が現れる不思議な都市でした。貴族たちの華やかな生活の裏で、深い闇が広がっていました。
平安時代には、そんな光と闇の京の都を舞台として様々に優れた物語文学が誕生しますが、そのなかで多くの不思議な出来事、摩訶不思議な話を採り上げてまとめられたのが「今昔物語」です。

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今昔物語の成立年代は不明ですが、12世紀半ばの平安時代末期から鎌倉時代にはできていたと考えられています。内容的には仏教説話を中心に、それまでに書かれたいろいろな物語や説話、あるいは巷に語り伝えられた話などが集められており、その舞台は京の都から日本各地、中国やインドまで広がっています。今昔物語は現代的に言えば、京の都をはじめ日本と海外の不思議な話を収集した都市伝説集と言ってもよいのではないでしょうか。

そしてこの今昔物語の特徴のひとつが、天狗に関する様々な話が初めてまとめられたということなのです。

 

まるまる天狗の話が集められた巻も

今昔物語には巻第1から巻第31までがあり、そのなかにおよそ1,000あまりのお話が収められています。全体は天竺(インド)の話、震旦(中国)の話、そして本朝(日本)の話の三部構成でできており、巻第11以降が日本を舞台としたお話。そのなかの巻第20に天狗の話が集められているのです。

実はこの巻第11から巻第20までというのは仏教説話を集めた一連の巻で、天狗の巻はその最後となる部分。仏教説話という性格上もありますが、天狗は仏教に敵対する存在として登場して来るのです。それまで摩訶不思議な妖しい存在ではあっても、鬼などと比べてもうひとつイメージがはっきりしなかった天狗が、初めて仏教に反する代表というようなイメージで現れて来ます。

 

天狗は羽をはやし仏教に敵対し妨害する物の怪

今昔物語の巻第20には、11話の天狗説話があります。このなかで天狗というのは羽をはやした物の怪であり、仏教に敵対し妨害する存在であること。天狗は妖術を使い、仏道の修験者であっても天狗に取り憑かれることなどが描かれます。

ただし、今昔物語は不思議な話を集めた都市伝説集ではありますが、同時に仏法の大切さありがたさを説く仏教説話の性格が強いお話ですから、天狗は必ず仏法には負けてしまいます。
平安時代の闇の世界におけるもう一方の主役である鬼は、安倍晴明などの陰陽師や源頼光といった強い武将に退治されてしまいました。それに対して天狗は、徳の高い僧たちによって結局は調伏されたり退けられたりしてしまうのです。

鬼と天狗、日本の闇の世界に君臨し強い力を持った二大妖怪は、このようにして平安時代に同時に登場しながら、退治され調伏される存在として語り伝えられていきました。

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