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江戸時代に大ヒット!怪談集『絵本百物語』に描かれた奇妙な鬼たち

鬼伝説
 
「百物語」というのをご存知でしょうか。これは日本独特の怪談話を楽しむ方法で、新月の夜に集まった人たちがひとりずつ順番に怪談話を語り、100話語り終えると本物の妖怪が現れるとされているものです。
中世には武士の肝試しなどで始まったと言われ、江戸時代には町人の間でも流行り、江戸の妖怪大流行を担う娯楽となりました。当初は別の部屋に100本の灯心を備えた行灯を置いて、話がひとつ終わると灯心を1本引き抜くといった方法で行われていましたが、江戸末期には100本のロウソクを部屋の真ん中に置き、1本ずつ灯りを吹き消すという今日に知られる方法で行われるようになっています。

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この百物語を題材にし、鳥山石燕の妖怪画集と並んで広く知られたのが『絵本百物語』という出版物です。
『絵本百物語』は天保12年(1841年)という江戸終末期の刊行。江戸時代には多くの百物語の怪談本が流行しましたが、この『絵本百物語』には怪談話とともに妖怪の挿絵がついており、江戸の妖怪大流行を代表するもうひとつの絵本と言えるかも知れません。
それではそのなかに登場する鬼を紹介してみましょう。

 

日本一の巨大鬼!?「手洗鬼」

「手洗鬼(てあらいおに)」は、四国に現れた巨大な鬼です。絵に添えられた解説には「讃州高松から丸亀に通じる入り海がある。その間の山々の三里(約12キロメートル)をまたいで手を洗うものがいて、讃岐の手洗鬼と言う」とあります。12キロの山間部をまたいで海で手を洗う鬼ですから、身長はどのくらいになるのでしょうか。
香川県には、山をまたいで瀬戸内海の水を飲んだという「オジョモ」という巨人の伝説が残っているそうです。また日本の各地には「ダイダラボッチ」という巨人の伝承が古代から残っています。ダイダラボッチは日本の国造りの神への信仰が生んだ巨人とも言われ、巨大な山の神とも言えるものですから、この手洗鬼も山の神=鬼のひとりということになるのかも知れません。

 

熊の妖怪と雷の妖怪

「鬼熊(おにぐま)」は鬼という名前が付いていますが、いわゆる鬼の一種というよりは鬼=強い妖怪となった熊ということのようです。歳を重ねた熊が非常に力の強い妖怪となり、人間のように二本足で歩いて山から人里に下り、家畜の牛馬を捕らえて山に持ち帰り食べるというものです。

「かみなり」は、いわゆる鬼の姿をした雷神ではなく「雷獣(らいじゅう)」のことです。
雷神が二本の角に虎のふんどしで太鼓を鳴らす鬼の姿として描かれるのは、やはり丑寅(うしとら)の鬼門から来たイメージだといくことですが、この雷神が雷を落とすと雷獣という妖怪が地上に落ちて来ます。雷獣は雷神とは違い犬やオオカミに似た姿をしていて、前足は2本ですが後ろ足は4本もあります。通常は雲に乗って空を飛んでいますが、雷とともに地上に落ちると樹木を切り裂き人間に害をなしたということです。
戦国武将の立花道雪がこの雷獣を斬ったという話や、江戸時代に雷獣を捕獲したという話も残されているのだそうですが、はたして本当だったのでしょうか。

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