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ケンタウロス族の賢者ケイローンとアスクレーピオスの物語

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ギリシャ神話のイクシーオーンの物語や「ラピテース族」との争いの物語に語られるように、半人半馬の「ケンタウロス族」は粗暴で好色な野蛮な一族と考えられています。
しかし、そんなケンタウロス族にあって特別な存在なのが、賢者「ケイローン」です。
ケイローンがどうして特別なのかというと、まずその出自が他のケンタウロス族とは異なっているからです。

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他のケンタウロス族とは出自が異なるケイローン

ケンタウロス族はイクシーオーンの物語にあるように、ラピテース族の好色で野蛮な王族イクシーオーンと、最高神ゼウスの妻である女神ヘーラーを寝取ろうとするイクシーオーン企みを見破って、ゼウスが雲から作った替え玉のネペレーとの間に生まれたとされています。

しかし同じケンタウロスでも、ケイローンは生まれが違うのです。
ケイローンの父親は、巨神族ティーターンの長であり大地と農耕の神クロノスです。このクロノスと、同じくティーターン族の海神であるオーケアノスの娘ピリュラーとの間に生まれたのがケイローンなのです。

ピリュラーはニュンペーという女精霊神で、黒海沿岸の島に住んでいました。クロノスはその島に行き馬の姿となってピリュラーと交わったのです。しかし同じティーターン族の大地の女神のレアーに見つかってしまってクロノスは馬の姿で逃げ、ピリュラーも島を離れてテッサリア地方のペラスゴスの山中で子供を産みました。

その子が、半人半馬のケンタウロスであるケイローンだったのです。

 

ケンタウロス族の賢者となったケイローン

このような出自を持つケイローンは、ケンタウロス族のなかでも例外的な存在でした。
オリュンポス十二神のひとりで、芸能と芸術の神であり太陽神のアポローンからは音楽や医学、予言の術を学び、月の女神で狩猟と貞潔の神であるアルテミスからは狩猟の技術を学んだとされています。

そうしてケイローンはケンタウロスの賢者となり、優れた医師ともなりました。ラピテース族の王プレギュアースの娘コローニスと太陽神アポローンとの子であるアスクレーピオスに医術を教えたのはケイローンといわれ、アスクレーピオスは後に医学の神になりました。

ケイローンとアスクレーピオスにはこんな物語があります。

 

ケイローンと医学の神となったアスクレーピオス

アポローンはコローニスと連絡を取るために、1羽のカラスを使っていました。このカラスは白い羽を持ち人間の言葉を話したのです。ある日、このカラスがコローニスは浮気をしているとアポローンに伝えます。怒ったアポローンは、コローニスを矢で射殺してしまいます。しかしそれは、道草をしてサボったカラスがついたウソだったのでした。

それを知ったアポローンはカラスから言葉を取り上げ、羽を真っ黒にして天空に上げ晒しました。これが星座のからす座となったといいます。

じつはコローニスは身籠っていたのですが、それをアポローンは知らなかったのです。アポローンは死んだコローニスから胎児をとりあげ、自分の弟子で医術に優れたケンタウロスの賢者ケイローンに預けました。その胎児がアスクレーピオスでした。

アスクレーピオスはケイローンのもとで育ち、やがて医術を学んでケイローンを凌ぐほどになります。ケイローンのもとから独立したアスクレーピオスは、死者を蘇らせることまでできるようになったのだそうです。しかし、死者を蘇らせるのはこの世界の秩序を乱すと冥界の王ハーデースが最高神ゼウスに強く抗議し、ゼウスは神の雷(いかずち)でアスクレーピオスを撃ち殺してしまいました。

しかしその後、アスクレーピオスの功績は認められ、天に上げられて神々の一員として星座のへびづかい座となったのです。

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