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クラーケンだけじゃない!日本にもいた「海の超巨大怪物」

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海の巨大怪物には正体不明の「クラーケン」をはじめ、ギリシャ、巨大クジラと言われる「ケートス」、巨大海亀と伝わる「ザラタン」や「アスピドケロン」といったものがあります。それらは島と見紛うほどの超巨大な生き物で、船乗りたちが間違って上陸してしまうほどなのです。

これらは主にヨーロッパ世界やイスラム世界で伝承されてきた怪物ですが、じつは日本にも古代からの海洋国らしく海の巨大怪物伝承があるのです。

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島と間違って超巨大赤エイの背中に上陸

江戸時代には、妖怪や不思議な存在が隠れた大ブームとなった、というお話を以前に別の記事でご紹介したことがあります。そんな江戸時代の後期の1841年に出版された、桃山人(戯作者の桃花園三千麿)が著者の『絵本百物語』という奇譚集に、「赤えいの魚」という巨大怪物が紹介されています。

「赤えいの魚」についての伝承は、こんなお話です。
安房国(千葉県)の野島崎から出た船が、大風に遭遇して漂流していまいました。すると島が見えて来たのでこれで助かったと安堵し上陸しましたが、そこは無人島のようで見慣れない草木がただ茂っており、その草木には海藻が引っかかっていました。人家を探して10キロメートルほども歩いても人影はなく、喉が渇いてあちこちにある水たまりの水を飲もうとしても、それらはすべて海水で魚が泳いでいました。
結局、ここで助けを求めることはできないとその島を離れ船に戻ると、その島は海中に沈んでしまいます。じつは、この島は巨大な赤エイだったというのです。

『絵本百物語』の「赤えいの魚」の解説では、この巨大赤エイは体長が12キロメートル以上もあり、普段は海底にいて背中に砂が溜まるとそれを払い落とすため海上に現れ、船が近づけば海中に沈むときに起こす荒波で壊されてしまう、ということです。

どうでしょう、クラーケンやザラタン、アスピドケロンといった怪物の話と似てはいないでしょうか。ただしこちらは赤エイで、背中が平らな分上陸しやすいかも知れませんが。

 

クジラをひと飲みする超巨大魚オキナ

ほかにも日本で伝承される海の巨大怪物としては、「オキナ」というものもいます。こちらは巨大な魚で、やはり江戸時代後期の1797年に出版された橘南谿の『東遊記後編』という紀行文に記述があります。

それによるとオキナは、蝦夷つまり北海道の東の海に棲息する超巨大魚で、オキナが海中から浮上する時には雷鳴のような轟音を鳴り響かせながら大波を起こして現れるそうです。餌として体長が30メートルから50メートルもあるクジラをひと飲みに飲み込み、それでクジラの群れが逃げ出すほどであり、オキナ自体の体長は「赤えいの魚」と同じく12キロメートルほどもあるのだそうです。

オキナが海上近くに浮かんでいるときの姿は、背中や背びれ尾びれが海上に突き出し、それはまるで島々が連なっているように見えるということです。

クラーケンが浮かび上がると島々が連なっているように見えると、18世紀の中頃にエーリク・ポントビダンが『ノルウェー博物誌』で紹介しましたが、同じ頃の日本で同じような表現で超巨大魚のオキナが紹介されていたのは、とても興味深いことではないでしょうか。

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