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朱雀と神社の鳥居の秘密(2)朱雀門と鳥居は同じ役割を果たすのか

朱雀

日本全国に8万社もあるという神社。その神社それぞれにほぼ建てられている鳥居は、その起源やなぜ「鳥居」という名前が付けられているのかは、実ははっきりとわかっていません。
鳥居とは、神社の神域と人間の俗界とを区分する結界の入口であり、一種の門であるとされています。平城京や平安京など、天照大神の子孫とされる天皇が住み朝廷の政庁があった古代の日本の心臓部、いわば神域の南の正門は南の方位を司る神鳥である「朱雀(すざく)」の名前が付けられた「朱雀門」がありました。
それでは鳥居の名前に付いた「鳥」には、朱雀門と同じように神鳥との関係性があるのでしょうか?いやそれ以上に、朱雀そのものとの関係はどうなのでしょうか?

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神鳥のルーツ鶏説は、鳥居に関係があるのか?

「陰陽五行思想」の研究から「鶏(ニワトリ)」と神鳥に関する考察をされた民俗学者の吉野裕子氏は、この鳥居の起源についても大変興味深い説を提示されています(「陰陽五行と日本の文化」)。
鳥居の起源説をご紹介する前に、鶏と神鳥についての考察を簡単におさらいしておきましょう。吉野氏によると、赤鶏という野生種から家畜になった鶏には陰陽五行思想で言う、万物の元素につながる赤・青(緑)・黄・白・黒の5色を身体にすべて持っていて、そこから中国大陸では鶏に対する崇拝が生まれた、ということだそうです。

実際に中国では、日の出を告げる雄鶏は妖怪を食べると考えられていて、家を護るために門や窓に貼る「窓花(窓などに貼る切り紙)」には雄鶏が描かれます。また、5つの方角を神鳥が司るという「五方神鳥」では、日の出を告げる鳥は「鳳凰」で、神鳥である鳳凰と鶏との関係性が想像されます。
また日本の天岩戸神話で、岩戸のなかに籠った天照大神を誘い出すために鳴かせた「常世長鳴鶏(とこよながなきどり)」という鶏の止まり木が鳥居の由来である、という説も別の記事でご紹介しました。

 

巽の方角の地門=風門と鳥居の関係性

吉野氏は、鳥居の起源あるいはその意味について、陰陽五行思想をもとに鳥居が建っている方位から考察します。そう、鳥居は方角的にはほとんどが神社の社殿に対して南で、その次に東となります。これは朱雀門についての記事でもご紹介した北極星信仰にまつわる「天子南面す」、つまり天上の神は北にいて南側を向き地上とつながるという考え方と同じなのです。

吉野氏は陰陽五行思想の「易」から、この方角は正しくは東南を示す「巽(たつみ)」で、相対する北西の「乾(けん)」が「天門」であるのに対して、巽は「地門」にあたると言います。この地門は別名「風門」と呼ばれ、天地を風が通り抜ける門です。ちなみに東洋医学で風門と言えば風邪の菌が出入りする門とされ、人間の身体では首の裏の下方に風門のツボがあります。

さて、吉野氏は天と地は万物の根源の陰と陽であり、その天地を往来するとは交合するということ、陰と陽が往来=交合することにより万物は繁殖し栄えることから、風門を通じて天地を風が往来するのは繁殖を意味すると言います。北西の「乾(けん)」の「天門」と東南の「巽(たつみ)」の「地門=風門」をつなぐ軸は、繁殖を意味する軸ということです。また、「風」は神意を受けて伝える役割を果たし、ですから「風土」はその地の有様を言い、その地の気を「風俗」と言い、人に及ぼして「風格」と言うのだそうです。

 

神社の鳥居とは朱雀の門なのか?

別の記事でも触れていますが、「風」の古字は神鳥の「鳳凰」の「鳳」です。ですから、神意を伝える神の使者とは鳥の風神であり、5色を身体に持ち日の出を告げる鶏が神格化したのが鳳凰ではないか。そして、神社の社殿が地上の「天門」であるのに対して鳥居は「地門=風門」であり、つまり神社の鳥居とは鶏=鳳凰の門である、というのが吉野氏の説です。

その後に、北極星信仰から社殿は真北に設置されて南面し、鳥居は南に建てられたということでしょうか。それは「天子南面」に相対する朱雀門と重なって来ます。朱雀は鳳凰と同一ともされますから、日本の神社の鳥居はいわば朱雀の門というわけで、日本全国には8万もの朱雀の門があるということになるのかも知れません。

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