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悲劇の不老不死伝説「八百比丘尼伝説」人魚の肉を食べることになった経緯

八百比丘尼

 

はからずも不老不死となった女性「八百比丘尼(やおびくに)」の伝説とは、どのようなお話だったのでしょうか。
この伝説は全国各地に伝わっているそうですが、よく知られているものでは佐渡島(新潟県)や若狭国(福井県)のお話があります。どうして全国各地に同じような伝説があるのか、またそれはいつごろのお話だったのかなど八百比丘尼伝説の謎については、また別の機会に考えてみたいと思いますが、まずは最も有名な若狭に伝わる伝説をご紹介することにしましょう。

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人魚の肉の料理を持ち帰った長者

むかし、若狭国に高橋長者という裕福な家がありました。その家には娘がいて16歳になった頃のことです。この村に住むある男(老人というお話もある)から高橋長者は食事に招かれました。その男はあるときに、いずこからともなく村にやってきて住み着き、いつのまにか村にとけ込んでいた者でした。
さて、この正体のわからない男に招かれた高橋長者が村の者たちと一緒に行ってみると、その男の家はとても大きな屋敷でした。男に案内されて屋敷を見て回り、ふと調理場を覗いてみると、料理人が不思議なものを調理しているのが見えたのです。それはなんと、上半身が人間のようで腰から下が魚の姿をした人魚だったのでした。

 
やがて高橋長者たちの前に料理が出されて来たのですが、人魚の肉の料理だということで気味が悪くて誰も手をつけません。帰ろうとする長者たちに、それではと屋敷の男はその料理を無理矢理お土産に持たせたのでした。皆は帰り道にそのお土産を海に投げ込んで捨ててしまいますが、珍しいものが好きな高橋長者だけは人魚の肉の料理を持ち帰り、とりあえず家の戸棚のなかに隠しました。

 

 

人魚の肉を食べて不老不死となり、諸国を巡る比丘尼となった娘

父親が戸棚に何かを隠したのを見ていた高橋長者の娘は、その夜、こっそりと人魚の肉の料理を食べてしまいます。しかし娘はそれが自分の身に何をもたらすのかは、まったく知りませんでした。

 
やがて娘は、とても色が白く美しい女性へと成長します。結婚し幸せな日々を送るのですが、夫が年をとって行っても娘は少しも老いることなく美しいままでした。夫が死んだあとも若く美しい姿は変わらず、求婚して来る男性が後を絶ちません。ついには39人もの男の嫁となり、それらの夫やまわりの人々は次々に死んで行くのですが、高橋長者の娘だけは年もとらず死ぬこともありませんでした。

 
あの女は人魚の肉を食べて死ななくなった化け物だと言われ、村の人々から怖がられて相手にされなくなります。不老不死は、決して幸せをもたらすものではなかったのです。ひとりぼっちになってしまった娘は、哀しみのあまり村を出て諸国を巡る比丘尼となりました。

 
いつしか800年も生きる八百比丘尼となった娘は、全国各地を巡りながら人々を助け神仏への信仰を説き、行く先々で白い椿を植えたということです。そして故郷に戻って来ると、洞穴に入って行き、もう出て来ることはありませんでした。
八百比丘尼が生入定(生死を超えて悟りを得ること)したとされるこの洞窟は、福井県小浜市の「空印寺」にあり、洞窟の入口でおだやかなお顔の八百比丘尼の像が拝観者を迎えてくれます。

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