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草薙剣とはどんな剣なのか?実物を見た人の証言を分析

刀剣伝説

 

天照大神(あまてらすおおみかみ)から下された「三種の神器」のひとつ。神の剣である「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)=草薙剣(くさなぎのつるぎ)」の実物を見たことがある人は、古代はともかくとして熱田神宮のご神体として祀られて以降、ほとんどいないと言われています。
それではこの草薙剣とは、はたして実際はどんな剣なのでしょうか。

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江戸時代の証言

江戸時代中頃の玉木正英という神道家が、その著書「玉籖集」に熱田神宮の大宮司社家の4、5人が草薙剣を見たときの様子を記しています。
それによると、草薙剣は樟木(クスノキ)の箱の中に黄金を敷いて、その上に納められていたと言います。

 
長さは2尺7、8寸(81〜84cm)ほどで、刃先は菖蒲の葉のような形で中ほどはむくりと厚みがあり、柄の方の6寸(約18cm)ほどは筋立っていて魚の骨のようであった。色は全体に白かった、とのことです。

 
一般的な日本刀(打刀)の長さが、例えば江戸時代に好まれたものではだいたい2尺3寸(約70cm)、よくドラマや映画の時代劇で使用されているものが80〜90cmぐらいと言いますから、同じような長さの剣であったということでしょうか。

 

 

尾張連家の言い伝え

刀剣研究家の川口陟氏が「日本刀剣全史」で紹介した熱田の尾張連(おわりむらじ)家の言い伝えによると、長さは1尺8寸(約54cm)ほどで、鎬はあるが横手(切先と刀身の境界線)はなく、柄は竹の節のようで5つの節があり、区(まち:刃と柄の境の部分)は深くくびれている、ということです。

 
江戸時代の証言よりは長さが多少短いですが、剣のかたちとしてはだいたい同じで、特に刀身に厚みがあって、魚の骨や竹の節のように見える柄であることから、草薙剣は銅剣(白銅剣)であるという説が有力となりました。特に中国の洛陽市から出土した春秋戦国時代(紀元前770年から紀元前221年)の有柄式銅剣などには、このようなかたちのものが見られるそうです。

 
しかし、朝鮮半島からは有柄式銅剣と同じようなかたちの鉄剣も見つかっているそうで、必ずしも形から銅剣か鉄剣かは断定できないのだとか。

 
また、この2つの証言とは違ってくるのですが、草薙剣は「素環頭大刀(そかんとうたち)」という柄の頭が丸く輪になっている大刀であるという説もあります。これは古事記の記述で草薙剣のことを指して「都牟刈之大刀(つむがりのたち)」という名前があり、「都牟刈(つむがり)」を「頭曲(つむまがり)」と解釈し、頭が丸くなっている太刀ではないかとする説です。

 
ただ素環頭大刀は、名前の通り両刃の剣ではなく片刃の刀ですので、刀身の形も大きく変わって来ます。古事記では日本書紀と異なり、草薙剣のことを「草那芸之大刀」と記していますから、実は剣なのか大刀なのかもはっきりとはしていません。いつか草薙剣が人々の目に触れる日が来るのか、それとも永遠に謎のままなのか、それは誰にもわからないことなのです。

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