エフェソスのアルテミス神殿とギリシア神話、ローマ帝国を巡る遺跡群
トルコにある、エ-ゲ海地域最大のローマ遺跡として有名なエフェソスは、紀元前に世界の七不思議として提唱されたうちのひとつである、エフェソスのアルテミス神殿があることで知られています。神殿跡は、廃墟のような建物と、再現された柱程度しかなく、紀元前7世紀頃に創建された建造物の名残はほとんど残っていないのですが、周辺には当時のローマ時代の遺跡が数多く残されていて、ローマ帝国の繁栄と存亡の歴史を味わうことのできる、世界でも有数の観光地となっています。
メミウスの記念碑
アルテミス神殿は、ギリシャ神話に登場する狩猟と貞潔の女神であるアルテミスを祀った建物として建造されましたが、その近くには、メミウスの記念碑というレリーフが存在しています。紀元前80年頃のエフェソスには、ローマ帝国からの重税に苦しんでいた多くの市民が存在していて、ついにはローマ帝国に反旗を翻し、暴動にまで発展した、とのことです。暴動はローマ帝国によって鎮圧されましたが、その際には多くの市民が命を落とした、といいます。メミウスの記念碑と呼ばれるレリーフは、このときに亡くなった多くの市民をなぐさめるために建てられた、とのことです。
周辺にもある数々の神殿
アルテミス神殿は、創建当時の痕跡をほとんど残していないのですが、周辺には他にも神殿跡が今も残っています。代表的なものとして、ドミティアヌス神殿やハドリアヌス神殿があげられます。前者は建設当時、エフェソスで最大級の神殿とされていたそうで、今では数本の柱を残すのみとなってしまっていますが、それでも柱の太さから、神殿の全貌はかなり規模であることがうかがえます。また、この神殿の創建者は、1世紀頃のローマ皇帝であるドミティアヌス帝といわれていますが、この人物は圧政の末に暗殺され、当時の建造物はあらかた取り壊されているそうで、この神殿跡は統治時代の数少ない遺跡でもあります。後者は、美しいレリーフをもったアーチ状の神殿跡を残しています。2世紀頃のローマ皇帝である、ハドリアヌス帝に捧げられたものだそうで、レリーフにはギリシャ神話の登場人物である、メドゥーサやティケ女神があしらわれています。
音楽堂後
遺跡入り口付近にあるのは、オデオンと呼ばれる音楽堂跡です。オデオンは、音楽堂としての機能のほかにも、集会や選挙といった政治活動をおこなうためのステートアゴラ(行政広場の意味)、金融取引所、議事堂としての機能も持っていたそうです。こちらの遺跡も柱が中心で、建物自体はほとんど残っていないのですが、林立している大きな柱から、当時の建物の規模がしのばれます。