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失われた森…イースター島の歴史と自然破壊を考察する

06.モアイ
 
モアイ像を擁していることで有名なチリのイースター島は、さまざまな書物や資料の中で、「文明の誕生から衰退までのプロセスについて、自然環境や生態系の破壊など、現代の環境問題にも通じるモデルケースとして語られている」ことが多く、5世紀頃に人間が住みだして以降、19世紀頃には既に現在の姿になっていて、その間には自然環境や生態系の破壊があった、とされています。現在のモアイ像の写真などから推測すると、決して「緑のない、砂漠のような地域」には見えないのですが、本当に森や木は今後も生い茂ることはないのでしょうか。

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現在は大規模な森林は存在しない

現在のイースター島は、そもそも面積が小さい(香川県の小豆島程度の大きさ)こともあり、大規模な森林は存在していません。しかし砂漠のようなむきだしの地面や砂地というわけではなく、草原が広がり、その中にモアイ像が点々と立っている、といった風景です。木がまったくないわけではないのですが、日本の島と比較すると、少ないようです。通説では、「かつては森林も川もあったが、モアイ像を運搬したり、人口の激増に対応して農地を作ったり、といった目的で長年にわたって大量に木を伐採した結果森林が消滅し、その後再生していない」、ということです。

 

イースター島の気候

先にお話した「人的原因」の他にも、イースター島の古代文明が衰退した理由のひとつとして、「厳しい自然環境」があげられていますが、イースター島の気候は、日本と比較しても(南半球なので季節は日本と逆ですが)年間を通じてきわめて温暖であり、年間の降雨量も1000ミリをこえ、森ができたり木が育ったりするための自然環境は整っているように思えます。島なので「風が強い」ことや、「台風の影響を受けやすい」といったことはあるかと思いますが、これとて島国である日本や、本州周辺の島と同じような環境である、といえそうです。

 

森林再生には条件があった

森林ができるまでの学術的な専門用語の中に「乾生遷移」という言葉があります。これは、簡単に解説すると「緑のない場所で、コケ類のような緑から始まり、安定した森林に至るまでのプロセス=状態遷移」をあらわしているそうなのですが、このプロセスで森林を再生することができる地域は、世界的にみると非常に限られている、というのです。一般論としては、「一度消滅した森林の再生には、とてつもなく長い年月がかかる」、ということです。中国の黄土地方も、大昔は大森林があったようなのですが、「人類が存続している間に森林が再生することはない」、といわれています。日本に暮らしていると、感覚的にはしっくりこない部分なのですが、イースター島は、「世界のほとんどの地域と同様に、短期間での森林再生に適さない場所だった」というのが、現時点での結論のようです。

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カテゴリ: その他

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