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遥かインドから比叡山のトイレに辿り着いた天狗のお話~今昔物語

パワースポット
 
今昔物語の巻第20には天狗にまつわる説話が11話収められていますが、その冒頭を飾る第1話は、日本から遥か遠くの天竺(インド)から天竺天狗がやってくるというお話です。
それも天竺から震旦(中国)を通って、海を越えて日本に渡り、なぜか比叡山の延暦寺のトイレに辿り着くというとても不思議なお話なのです。
それではこの物語を簡単にご紹介してみましょう。

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天竺の天狗、日本を目指す

このお話の主人公は天竺の天狗です。なぜ天竺(インド)に天狗がいたのかはよくわかりません。もしかしたら、天狗が羽を持っていて空を飛ぶという特徴から、インド神話の不死鳥ガルーダ(迦楼羅)が日本の天狗のひとつの元になったという説に通じるのかも知れません。
平安時代の天狗は鼻の長い天狗というよりは鳥(トビやカラス)の姿をした天狗であり、半分人間で半分は鳥であることから、その姿がガルーダに似ているということがあります。

ガルーダの天狗かどうかはよくわかりませんが、その天竺天狗が震旦(中国)にやって来ると、海の水が「諸行無常、是生滅法、生滅々已、寂滅為楽」と鳴っているのが聞こえました。これは「大般涅槃経(だいはつねはんきょう)」という教典の一節で、この世のすべての存在は無常であって、常にとどまることはなく川の流れのように変化するものである、というような意味です。
天竺天狗は、「海の水がどうして、このような尊く深遠な経文を唱えているのだろうか。この水の流れを探って、その流れを邪魔してやろう」と、水の流れを辿りながら日本にまでやって来ます。

 

比叡山延暦寺のトイレに辿り着いた天竺天狗

天竺天狗は水の流れを辿りながら、博多から瀬戸内海を経て淀川、宇治川とさかのぼり、やがて比叡山の横川へとやってきます。比叡山の横川とは、円仁(慈覚大師)が建立した場所で横川中堂という本堂を中心としたエリアです。
そして天竺天狗が辿り着いたのは、この横川の僧たちが使う厠(かわや=トイレ)でした。

経文の声は神々しく聞こえるのですが、仏法を護る四天王や護法童子がいて近づくことができません。この水の流れは比叡山で仏法を学ぶ僧たちの厠から流れているので、水も尊い経文を唱えているのだということを知った天竺天狗は、仏道を妨げる気持ちが失せてしまいます。この天竺天狗は後に人間に生まれ変わり、天台宗の座主になる明救(みょうぐ)という人になったということです。

インドから来た天狗が水の道を辿って海を渡り、川を遡って比叡山延暦寺のトイレに辿り着くというのは面白い話ですが、そこには仏法の聖なるものに対して天狗は穢れたものであり、穢れの場所である厠から先には行けず、また聖なるものが勝つということを表しているという説もあります。

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