> >

特別な存在「白虎」~他の四神の霊獣との違いとは?

223356
「四神」と呼ばれる4種類の霊獣の壁画で有名な、奈良県の明日香村の「高松塚古墳」と「キトラ古墳」。高松塚古墳には、四神のうち南を司る「朱雀(すざく)」がいない(盗掘で壁が壊され失われたという説と、もともと描かれなかったのでは?という説もある)という違いがあるのですが、それ以外にも高松塚古墳では西を司る「白虎」が左側(南側)を向いているのに、キトラ古墳では右側(北側)を向いているという違いもあります。

スポンサードリンク


 
唐の時代(618年から907年)の初期の古墓では、墓室に至る墓道の入口近くの東西両壁にそれぞれ東を司る「青龍」と白虎の姿を一対のものとして描きました。それぞれが墓の入口の方向(南側)に歩み出すように描かれていますから、青龍は右側を向き白虎は左側を向いているのが普通なのですが、日本のキトラ古墳では白虎が向いている方向が異なるのです。

これは、陰陽五行思想の気の循環に基づいて四神が循環するように描かれたため、すべての四神が右側を向いていると解釈するそうですが、さて本当はどうなのでしょう。

 

一対としてよく似た姿で描かれた青龍と白虎

四神とは、中国で遥か古代に信じられていた神話的な考え方を基に、春秋戦国時代(紀元前770年から紀元前221年)に興った陰陽思想と五行思想が結びついた「陰陽五行思想」によって生まれ整理された4種類の霊獣(神獣)のことです。

それぞれが東西南北の宇宙と大地の方角を司っていて、東を青龍、西を白虎、南を朱雀、そして北を「玄武」という霊獣が司るとしています。唐の時代の墓道の壁画で描かれたように、このうちの青龍と白虎は一対とされていますから、例えば日本のキトラ古墳の壁画でも青龍と白虎は実によく似た姿で描かれています。

これはどうも描かれたときに同じ型紙を用いたようなのですが、どうして青龍と白虎は一対のものであり、姿も似たのでしょうか? これについては、中国で龍の地位が上がるにつれて、白虎が徐々に龍化したのだという説がありますが、はっきりとしたことは分かりません。

 

白虎は500年を生きて霊獣となる

四神のうちで、もとが実在の動物であることがはっきりしているのは白虎だけです。青龍は架空の生き物である龍であり、朱雀は伝説上の鳥で同じく伝説上の鳳凰とも同一視されます。また、玄武は亀と蛇が絡み合った不思議な存在です。

しかし白虎とはまさしく白い虎であり、ホワイトタイガーは現実に存在していて、例えば日本の東武動物公園でその親子の姿を見ることができます。インドでは白いゾウや白い牛などとともに白い虎は神聖な生き物として崇められ、その姿を見ると天運に恵まれ幸福になると言われているそうですが、古代の中国でも虎は百獣の王であり、そのうちでも白い虎は500年を生きて霊力を獲得し、すべての獣の王になるとされてきました。

ですから白虎とは、地上の生き物のなかでは特別な存在であり、かつ古代の人々でも実際に目にすることができるかも知れない霊獣だったのでしょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加


スポンサードリンク
スポンサードリンク

Comments are closed.