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歴史が復活させた龍への信仰…クリシュナ神話の蛇神ナーガ

インド ヒンドゥー教
 
インドは仏教の発祥の地ですが、現在のインドには仏教徒はわずか0.8%しかおらず、ヒンドゥー教徒が80.5%で大半を占めています。

紀元前16世紀頃に北西から侵入したアーリア人が支配するインドの主な宗教はバラモン教でしたが、紀元前5世紀頃にはこのバラモン教に批判的な仏教やジャイナ教ができます。やがてバラモン教も支配者の宗教であることから変化を迫られ、先住民族の信仰や宗教を取り入れてヒンドゥー教となっていきます。

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そのような変化のなかで、バラモン教の聖典である『ヴェーダ神話』において最強の神であるインドラに退治されてしまった蛇神も、やがて復活して来るのです。

 

仏教に取り入れられた蛇神ナーガ

インドの蛇神は総称して「ナーガ」と呼ばれますが、個別に名前のある蛇神だけでも500以上はおり、全部で1000のナーガがいるとされています。仏教ではこの蛇神ナーガが取り入れられ、「龍王」とされました。

仏教におけるナーガは釈迦が悟りを開いたときに守護したとされ、仏法の守護神となりました。初期の大乗仏教の教典のひとつである「法華経」には、釈迦の教えを聞くためにナーガの王である「ナーガラージャ」の多くが集まり、その竜蛇神たちは「八大龍王」と呼ばれました。八大龍王は、仏法に帰依しそれを守護する古代インドの神々である「天龍八部衆」に属する龍族の八王で、これ以降、護法の神となったのです。

ちなみに蛇神であるナーガは、仏教が中国に伝わったときに龍と同一視されて龍王となり、日本へと伝わって行きます。

 

ヒンドゥー神話の、世界を支える蛇神

一方、インドで仏教は発展せずに、ヒンドゥー教が人々の宗教の主流となっていきます。
ヒンドゥー教はアーリア人のバラモン教を軸としながらも、古代から続く先住民族の信仰や宗教、神々を取り入れて行く訳ですが、そのなかで北方のアーリア人に追い出されるように南インドで生きていた蛇神ナーガへの信仰も復活しました。

4世紀から6世紀頃に成立したと考えられる叙事詩「マハーバーラタ」の英雄で、ヒンドゥー教に取り入れられたインド土着の神である「クリシュナ」の神話では、主人公のクリシュナの兄のバララーマは蛇神ナーガの「アナンタ」の化身とされています。またアナンタは「シェーシャ」とも呼ばれ、このシェーシャはナーガ族の王であるナーガラージャであり、1000の頭を持ち世界を支えるものと言われているのです。

またクリシュナ自身はインドの最高神のひとつである「ヴィシュヌ」の化身とされていて、ヴィシュヌは世界を維持する神。ヒンドゥー教のヴィシュヌ派の創世神話によると、ヴィシュヌは宇宙ができる前はナーガの王であるアナンタの上に横になって乗っていて、ヴィシュヌのヘソから蓮の花が伸びて行って創造の神のブラフマーが生まれ、ブラフマーの額から破壊の神のシヴァが生まれたと言うことです。

 

退治されない蛇神の話

その後、クリシュナ神話では様々なナーガが登場します。そのなかでも、クリシュナがナーガをこらしめる話が出て来ます。

アーリア人の「ヴェーダ神話」では、雷の神であるインドラにナーガは退治されてしまいました。しかし、ジャムナ川に棲む110の頭と毒を持つ「カーリヤー」というナーガに襲われたクリシュナは、その頭に乗って踏みつけながらダンスを始めます。
カーリヤーはクリシュナが神であると悟り、身動きが出来なくなってしまいます。やがてカーリヤーの妻たちがやってきてクリシュナを拝み命乞いをすると、クリシュナは頭から降りましたのでカーリヤーは詫びました。
このカーリヤーは、もとは違う場所にいたのですが、ナーガ族に敵対する神鳥のガルーダに追われてこのジャムナ川に来たのでした。クリシュナはカーリヤーにもとの場所に帰るように命じますが、ガルーダに追われた話をして帰れないと渋ります。クリシュナは、私に踏まれた頭の足跡を見せればもう誰も手出しはできないと言い、それを聞いたカーリヤーは帰って行きました。

このように、クリシュナは結果的にナーガを助けることになり、単なる蛇退治伝説とは異なる結末となっているのです。

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