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龍のルーツのひとつ、インドの竜蛇神ナーガはどこからやって来た?

インド ヒンドゥー教
 
中国と並んで古代四大文明の発祥の地であるインドも、龍と関係の深い場所です。
古代のインドと言えば様々な神が登場するインド神話の土地であり、また日本にも深い関わりのある仏教発祥の地でもあります。特に中国を経て日本に伝わった仏教と龍とは、後に日本でも大きな関係性を持って来ますが、ここではその仏教発祥以前の古代のインド神話と龍との関わりを見てみることにしましょう。

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世界で最も古い竜蛇神はインドのものだった!?

世界各地には「竜蛇」の伝説があります。ちなみに龍と蛇が同じものなのか、違うものなのかは諸説がありますが、中国の南方地域では、蛇信仰がやがて龍へと進化して行き、中国における龍の源流のひとつとなりました。従って、蛇が成長・進化または変化したものが龍とも考えられますが、とりあえずそういった蛇が神や神に等しい存在となったものを「竜蛇」としておきたいと思います。

「竜蛇」の伝説は、エジプトからヨーロッパ、中東、またアフリカや中南米、アジアでは東南アジアからフィリピン、また太平洋メラネシアのフィジーまで幅広い地域に残されています。そのなかで最も古く、また数多くの神話・伝説が残されているのがインドなのです。

インドの伝説が特徴的なのは「蛇神」が確立されていることで、その蛇神は「ナーガ」と呼ばれています。インド神話というのは古代インドの宗教である「バラモン教」や「ヒンドゥー教」に伝わる聖典に記された神々の物語ですが、ナーガもそのなかに伝えられながら、聖典に記される以前の古代の伝承が起源だと思われます。例えばインド神話のなかの「ヴェーダ神話」の最古の文献である『リグ・ヴェーダ』は、紀元前1500年頃から紀元前900年頃に作られたそうですが、ナーガはそれ以前の古代からインドの人々に伝えられて来たのだと考えられています。

 

退治されてしまうリグ・ヴェーダの蛇神

インドは古代より様々な民族からなり、また混血も進んでいますが、その中心とも言えるインド・アーリア人は紀元前16世紀頃に北西の方向からインドに侵入して定着しました。
このインド・アーリア人の古代宗教がバラモン教で、その聖典が『ヴェーダ』です。

実はこの『ヴェーダ』には蛇神であるナーガという名称はほとんど登場しないそうで、インドの蛇神信仰は、インド・アーリア人がやって来る以前から住んでいた土着の人々のものだと考えられています。
またナーガというのは、実はひとつの蛇神の名前ではなく、それぞれに個別の名前を持つナーガだけでも500以上おり、全部で1000のナーガがいるのだとか。ナーガはその総称で、ナーガ族とも言える存在でした。

インド・アーリア人の『ヴェーダ』の最古の文献「リグ・ヴェーダ』には、最強の神である「インドラ」が最強の蛇神であるアヒの「ヴリトラ」(ヴェーダでは蛇神はナーガではなくアヒと呼ばれる)と戦い、退治する伝説があります。
それによるとヴリトラはコブラの姿をしていて、神々をも萎縮させる咆哮(ほうこう)をあげると言います。ヴリトラは水を支配し、独占してしまい世界に水が流れるのを止めてしまいます。そこで雷の神であるインドラは雷の矛ヴァジラでヴリトラと戦い、退治してしまいます。そこからインドラは雨を降らす神となり、雨乞いの対象となりました。ちなみにインドラの中国名は「帝釈天」。あの柴又帝釈天の神様ですね。

インドラとヴリトラとの戦いの伝説は、古代に外部から侵入した人々=アーリア人と蛇神を信仰する土着の人々との戦いを象徴したものかも知れません。

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