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浦島太郎のルーツを探る(2)山幸彦は浦島太郎だったのか?

浦島伝説

 

浦島太郎の物語の元となる浦島伝説と主人公の浦嶋子のルーツと言われる人物(神様)で、最も良く知られているのは「山幸彦」ではないでしょうか。その物語は、古事記・日本書紀なかで「山幸彦と海幸彦」の神話で語られています。
この神話については、龍宮の謎を探る別の記事で採り上げたことがあるのですが、あらためて簡単にご紹介することにしましょう。

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浦島伝説とそっくりな山幸彦神話

天孫降臨で地上に下った「邇邇芸命(ににぎのみこと)は「木花咲耶姫(このはなさくやひめ)と出会い、二人の間に生まれたのが、「火照命(ほでりのみこと/海幸彦)」と「火遠理命(ほおりのみこと/山幸彦)」の兄弟です。じつは間にもうひとり「火須勢理命(ほすせりのみこと)」がいて三兄弟なのですが、火須勢理命は物語には登場しません。

海幸彦は海で魚を捕り、山幸彦は山で獣を狩っていました。ある日、弟の山幸彦が兄にお互いの道具と仕事の交換を提案しますが、どちらもうまくいかず山幸彦は兄の大切な釣り針を無くしてしまいます。
怒った海幸彦は弟を責め、山幸彦は1,000本の釣り針を作りますが赦してくれません。山幸彦が浜辺で嘆いていると「塩椎神(しおつちのかみ/潮流の神)」がやって来て、山幸彦を海の中の「綿津見神(わたつみのかみ/海神)」の宮へ連れて行きます。
この綿津見神の宮で山幸彦は海神の娘の「豊玉毘売命(とよたまひめ)」と出会い、結ばれて幸せな日々を過ごすのですが、3年経った頃、兄の釣り針を探しに来たことを思い出します。そこで海神が魚たちを集めて聞くと、赤鯛の喉に釣り針が引っかかっていることがわかり、山幸彦は無事にそれを取り戻し地上に帰ることになります。

このように物語の設定やディテールは違いますが、山幸彦を浦島伝説の浦嶋子と考えると、綿津見神の宮に行ってその海神の娘と結ばれ、幸せな3年間を過ごし故郷に帰るという流れはほとんど同じです。
しかし山幸彦の神話と浦島伝説が違うのは、その後日談です。

 

 

老人にはならない山幸彦

浦島伝説ではご存知の通り地上の現世は300年の年月が経過し、海神の娘の亀姫から持たされた開けてはいけない玉櫛笥(たまくしげ/櫛などの化粧道具を入れる美しい箱)を開けてしまい、浦嶋子は老人となってしまいます。
しかし山幸彦の場合は、地上に戻っても時間の流れは同じです。海神からもらった「潮満つ玉」と「潮干る玉」という2つの玉で洪水を起こして、対立する兄の海幸彦を苦しめ助けることによって海幸彦を従わせるのです。

 
また、豊玉毘売命は山幸彦の子供を授かり、地上の山幸彦のもとに来ます。豊玉毘売命は「子供を産むときは本来の姿に戻りますので、産屋の中を覗かないように」と山幸彦に言いますが、彼は覗いてしまいます。すると豊玉毘売命は「八尋和邇(やひろわに)」の姿になっていたので、山幸彦は驚いて逃げ、豊玉毘売命は生まれた子を置いて海に帰ってしまいます。
地上で再び幸せに結ばれることはないのですが、海神の娘は息子を山幸彦に残し、そのまた息子が神武天皇となるのです。

 

 

山幸彦を海神とその娘のもとに導く塩椎神の正体とは

さてここで注目したいのが、山幸彦を海神のもとに導いた塩椎神です。塩椎神は塩土老翁(しおつちのおじ)とも呼ばれ、とても年を取った老人の神様であるとされています。また塩椎神は潮流を司る航海の神なのですが、この塩椎神が同じく海と航海の神である「住吉大神(住吉三神)」と同一の神様であるという説があるのです。

 
住吉大神と言えば、万葉集の高橋虫麻呂の詠った浦島伝説の舞台にある摂津の住吉(すみのえ)にある住吉大社の祭神であり、丹後国風土記の浦島伝説の舞台である丹後半島の網野神社にも浦嶋子とともに祀られている神様。そうだとすれば、山幸彦=浦嶋子を海神とその娘のもとに導いたのは住吉大神ということになります。
住吉大神は神功皇后を補佐した「武内宿禰(たけうちすくね)」という伝説の人物と同じであるという説がありますから、塩椎神=住吉大神=武内宿禰ということになり、なんとも話は複雑になって行くのです。

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