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漢字の成り立ちから考察する、中国の龍の姿とヘビの関係性

龍 竜
 
中国の龍は古代の文明や文化のなかから生まれて後、明確な姿かたちを持って進化して行き、やがては皇帝のシンボルとされました。ところで、日本の龍としてもおなじみの、中国発祥の龍の姿がどうなっているかご存知ですか?

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時代は下って、「南宋」の時代(1127年から1279年)に出された『爾雅翼(じがよく)』という事典・自然博物書に、龍の姿の説明があります。それによると龍は「三停九似(さんていきゅうじ)」とされ、「三停」とは「首から腕の付け根まで」「腕の付け根から腰まで」「腰から尾まで」の3つの部位の長さが同じであることを意味し、これは天上、海中、地底の3つの世界を表します。

また「九似」とは、「角は鹿」「頭は駱駝」「眼は鬼(幽霊)または兎」「身体は蛇」「腹は蜃(しん/蜃気楼を造り出す伝説の生き物)」「背中の鱗は鯉」「爪は鷹」「掌(て)は虎」「耳は牛」に似ていることから来ています。

つまり龍の姿とは、様々な生き物の合体した姿だと言う訳です。そしてこれにはどうやら、古代の文明や文化から生まれた龍の成り立ちが関係しているようなのです。

 

北方の龍は馬やイノシシから生まれた?

別の記事で、世界最古とも言える中国大陸北方の龍の痕跡は、遼河流域の「遼河文明」の中の「興隆窪文化(こうりゅうわぶんか)」や「趙宝溝文化(ちょうほうこうぶんか)」、「紅山文化」に見られるとご紹介しました。
そしてその古代文化で見られる龍は、例えば趙宝溝文化の小山(しょうざん)遺跡から出た土器には、鹿や猪、鳥の頭で全身は魚の鱗(うろこ)に覆われ、魚の尾びれのある龍が描かれています。また紅山文化の龍の姿をした玉(ぎょく)である「玉竜」の龍は、猪のような顔や馬のタテガミを持っています。

このように遼河文明の龍は、猪や馬、鹿、そして鳥や魚といった、古代の北方の大地で人々に身近な動物たちの姿から龍が生みだされていたのです。

坂本龍馬の名前で有名な「龍馬(りゅうば)」という言葉がありますが、中国では龍馬は水の中にいる神で、首が長く背中に翼が生えていて水中から空へと飛び、この姿が龍の姿へ結びついたという説もあります。「西遊記」で三蔵法師が乗る白馬の名前は「玉龍」ですが、龍神の子で馬に姿を変えていましたね。

また魚で言うと、立身出世を表す「鯉の滝登り」ということわざは、「登竜門」の語源となった黄河上流の「竜門の滝」を登る鯉は龍になるという伝説から来ています。

 

漢字から見た龍とヘビの関係

一方で南方の蛇神信仰から進化したと思われる、龍とヘビとの関係はどうでしょうか。
これも別の記事で、ヘビが1000年生きると龍に変わるという伝説をご紹介しましたが、視点を変えて「龍」「竜」という漢字と「蛇」という漢字を比べてみることにしましょう。

龍と竜の部首はそのまま「龍」「竜」ですが、両方には同じ「立」が含まれています。一方で蛇の部首は「虫」で、龍や竜とは明確に違うことがわかります。
また、「水虺(き/まむし)」という蛇が1000年で龍になる前、500年でなる「蛟(みずち)」または「蛟龍(こうりゅう)」の「蛟」という漢字の部首はまだ「虫」なのです。

「虫」の部首は大地を這う生き物を表すもので、蛇とはまさに大地を這う生き物。ヘビは古代には、「長虫」という虫の一種と考えられていました。また「?」の訓読みの「まむし(蝮)」の語源は、「真虫」つまり真の虫ということから来ているそうです。

龍は、「尺木」と呼ばれる冠飾りのようなツノが頭にないと空を飛べないと言われていますが、中国で最も古い文字である「甲骨文字」の「竜」にはこの冠飾りのツノがあり、この部分が「立」にあたります。つまり「立」があって始めて、空を飛ぶ龍になるという訳なのです。龍の読みは「りゅう/たつ」ですが、立も「りゅう/たつ」ですよね。

大地の這う「虫」の一種であった「蛇」から、「立」を得て空を飛ぶ「竜」「龍」へと進化する。なんとなくヘビと龍の関係が見えて来たでしょうか。

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