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テンペスト~シェイクスピア劇に登場する風の精霊エアリエル

フェアリー妖精
 
16世紀に錬金術師で神秘思想家のパラケルススによって、「四大精霊」ひとつとして命名された空気と風の精霊「シルフ(シルフィード)」。そのシルフと同一視され、また源流とも考えられている「エアリエル」とともに、空気と風の精霊はパラケルスス以降に生まれた2つの文学作品によって近世ヨーロッパで知られるようになりました。

今回はその文学作品のうちのひとつ、シェイクスピアの戯曲「テンペスト」についてご紹介することにしましょう。

シェイクスピアは1564年に生まれのイギリス・イングランドの劇作家で、1493年生まれで1541年に亡くなったパラケルススの後の時代の人です。「テンペスト」はシェイクスピア晩年の作品で初演は1612年頃、その後すぐに彼は引退し、単独で書いた最後の作品とされています。

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空気と風の精霊が起こした嵐によって難破する船

その物語はこんなお話です。

ナポリ王のアロンゾーとその息子のファーディナンド、王の弟のセバスチャン、ミラノ公爵のアントーニオらを乗せた船が突然の嵐で難破します。しかしこの嵐は、野心家のアントーニオがナポリ王アロンゾーと組んで追放した、前のミラノ公爵でアントーニオの兄のプロスペローが引き起こしたものだったのです。

プロスペローは娘のミランダとともにミラノから追い出された後、漂着した孤島で魔法と様々な学問を研究していたのでした。そして彼は、島に棲んでいた空気と風の精霊のエアリエルや他の精霊たち、魔女を母に持つ醜い姿のキャリバンなどを手下や召使いとしていました。

嵐を起こしてナポリ王アロンゾーの船を難破させたのは、島のそばを航行していた船を引き寄せて彼らに復讐しようとしたからで、その嵐は精霊のエアリエルが命ぜられて起こしたものでした。題名の「テンペスト」とは、その嵐という意味です。

 

陰謀を阻止し罪を暴くエアリエル

難破した船の乗客たちは、プロスペローの孤島に漂着します。王の一行と離れてしまった王子のファーディナンドは、プロスペローの計略によってミランダと出会いお互い恋に落ちます。

一方、アロンゾー王は息子が死んだと嘆き哀しみ、その隙に王の弟のセバスチャンはミラノ公アントーニオと謀って、王が寝ているところを襲って王位を奪おうとしますが、それを察知した精霊のエアリエルが老臣ゴンザーロを起こして阻止します。

また過去にミランダを襲おうとして見つかり、精霊に見張られながら辛い仕事をしているプロスペローの召使いのキャリバンは、王の執事や道化の助けを借りてプロスペローを倒そうとしますが、これもエアリエルによって阻まれます。

アロンゾー王たちは王子のファーディナンドを探しに行きますが、突然美しい音楽とともに豪勢な食事が目の前に運ばれて来ます。一行がそれを食べようとすると、恐ろしい姿となった精霊エアリエルが現れ、テーブルの上を飛び回って食事を消し、さらにはアロンゾー王と弟のセバスチャン、ミラノ公アントーニオの3人の罪を暴き、神罰が下ると予告するのです。

アロンゾーは罪を悔い、他の2人は半狂乱となってその場を去ったのでした。

 

シェイクスピア劇によって知られるようになったエアリエル

プロスペローの魔法によって錯乱状態となり、森に閉じ込められたアロンゾー王たち。しかし、王が後悔している様子をエアリエルから聞かされたプロスペローは、これ以上の復讐を思いとどまり、魔法の杖を折ってアロンゾーたちを魔法から解き放ちます。そして目の前にいるプロスペローに驚くアロンゾー王たちを赦し、お互いは和解するのでした。

ミランダとファーディナンド王子は結ばれ、王の一行とともに故国へと無事に送り届けるようプロスペローはエアリエルに命じます。そしてエアリエルを、本来の空気と風の精霊として手下の身分から解放したのでした。

シェイクスピアはこの物語で復讐と同時に赦しと和解を描きましたが、エアリエルはそれを実行する重要な役回りとして、また舞台上で活躍するその姿によってイングランドで広く知られるようになったのです。

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