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知的な怪物!?原作に見るフランケンシュタインの本当の姿とは

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『フランケンシュタインの怪物』の怪物の一般的なイメージといえば、どんな感じでしょう。その姿は、大きな身体に角張った頭部。髪の毛は角刈りで額は張り出し、顔や全身には縫った痕がある。そして、首には雷の大きな電気の力で生命を宿した際の電極が刺さっている、といったところでしょうか。基本的には無口で、声を出したとしても「ウガッ」「ウガァー」とかしか言いません。

じつはこの姿かたちは、1931年にアメリカのユニバーサル・ピクチャーで映画化されたときに怪物役を演じたボリス・カーロフの姿が、後々までフランケンシュタインの怪物の一般的なイメージとして定着したものです。

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映画がもととなった怪物の姿

イギリス人女性のメアリー・シェリーの小説『フランケンシュタインの怪物』が1818年に初めて出版された後、1831年版の本に載せられた口絵では、怪物の髪の毛は肩にかかるくらいの長さがあって、肉体は頑健そうですが顔はなんだか細面のようにも見えます。また1826年にパリで初演された、小説から翻案された演劇「怪物と魔術師」の絵を見ても髪の毛は長く、首に電極が刺さっているわけでもありません。

ちなみに、怪物の生命が雷の電力によって与えられるという設定はユニバーサル映画オリジナルのもので、必然的に映画化以前には怪物の首に電極はないというわけです。

 

人間の言葉で語るフランケンシュタインの怪物

さて、メアリー・シェリーの小説『フランケンシュタインの怪物』という作品は、ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、「入れ子構造」という複雑な形式で構成されています。

どういうことかというと、物語の全体は、怪物を造り出した主人公であるヴィクター・フランケンシュタインを北極海で助けた海洋冒険家のロバート・ウォルトンという人が、自分の姉に宛てた手紙のなかで語るお話となっています。そのロバート・ウォルトンの手紙の語りのなかに、ヴィクター・フランケンシュタインが語る自分と怪物との物語が入っていて、さらにヴィクターの語りのなかに怪物の語る話が入っているという三重構造になっているというわけです。

いや、ここでちょっと待ってください、フランケンシュタインの怪物は「ウガッ」とか「ウガァー」とかしか言わないのでは?? いえいえこの怪物は、じつはとても雄弁に語る怪物だったのです。

 

怪物は読書家だった!?

生命を与えられたにも関わらずヴィクター・フランケンシュタインから見放された怪物は、彷徨い歩き回るなかである家の裏小屋に忍び込み、その家の家族たちの会話を聞き、暮らしぶりを観察することで人間の言葉を学びます。

さらには道端に落ちていた旅行鞄を拾い、そのなかに入っていた3冊の本、イギリスの詩人ジョン・ミルトンの叙事詩『失楽園』、ローマ帝国のプルタルコスが書いた伝記『プルターク英雄伝』、ゲーテの小説『若きウェルテルの悩み』を読みます。人間が悪魔に唆されて楽園を追放されてしまう『失楽園』には心を打たれ、『若きウェルテルの悩み』では主人公ウェルテルに共感して、その死に涙を流したというのです。叙事詩と伝記と小説の古典を読むなど、なんとも知的な怪物ではないでしょうか。

怪物が読んだ3冊の本にどうしてこれらが選ばれたのかは、また別の機会で探ってみたいと思いますが、いずれにしろ本を読み雄弁に語る怪物というのは、わたしたちが思い描くものとはどうやらずいぶんイメージが異なっているようです。

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