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古代ローマ時代にはすでに存在していた?狼男のストーリー

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古代ギリシャ、アルカディアの初代王リュカオーンはゼウスによって狼に変身させられてしまいました。狼男=狼人間の始祖とも言われるこのリュカオーン王にまつわる話が、古代ローマの博物学者プリニウスによってまとめられた『博物誌』に記されているそうです。

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祭のクジ引きで狼男にされてしまうという伝承

プリニウス(紀元22年または23年より79年)の『博物誌』は、地理、天文、動植物や鉱物などのあらゆる知識が扱われていますが、そのなかにはペガサスやユニコーン、ドラゴンといった架空と思われる動植物も記されていて、現代のファンタジーのネタ元とも言われます。そしてそこに登場する狼男=狼人間の伝承は、こんな話です。

アルカディアで行われていたリュカオーン祭の日には、クジ引きがあるのだそうです。そのクジ引きは、アントゥスの一族からひとりを選び出すというもの。選ばれた者はアルカディア湖のほとりに連れて行かれます。

そしてその者が衣服を脱いで樹木にひっかけ、湖に飛び込むと、狼になってしまうというのです。狼に変身した者、つまり男性ならば狼男というわけですが、この狼男が9年間のあいだ人肉を食べることなく我慢していられれば、再びアルカディア湖を泳いで行って人間へと戻ることができるのだとか。

クジ引きで選ばれ変身させられて9年間も人肉を我慢するなど、狼男的にはなんとも理不尽な話ですが、このクジ引き選びの話はそもそも狼男の始祖リュカオーン王と狼男への変身を創りだしたゼウスへの、供物や生け贄的な意味合いがあったのかも知れません。

 

満月の夜に変身するサテュリコンの狼男

プリニウスと同時代の古代ローマの文筆家ペトロニウス(紀元20年頃より66年)が書いたとされる、『サテュリコン』という小説にも狼男の話が出てきます。サテュリコンは、ローマ帝国ネロ期の堕落し退廃的となった古代ローマ社会を描いたものです。

そのなかで、主人公のひとりが宴会でこんな話をします。それは、主人公が愛人のもとに訪れようと出かけたときに連れになったある兵士の話。その兵士は、満月の光の下でやおら衣服をすべて脱ぎ、そのまわりに小便をかけて石のように硬くしたのだそうです。

それからその奇妙な兵士は、狼の姿へと変身し闇の中へと消えて行きました。主人公が愛人の住む農場に到着すると、その農場ではいましがた狼が家畜を襲ったのだとか。しかし、農場の人がその狼の首に槍を突き刺し、狼を追い払ったということでした。翌日、主人公が家に帰ると、昨晩のあの兵士が人間の姿に戻って首の傷を医者に治療してもらった、ということを知ったのでした。

この話のように、古代ローマでは狼男の伝承や物語がかなり広まっていたのだそうです。特にこのサテュリコンの中のエピソードには、満月の夜の変身や傷を受けて人間に戻っても同じ場所が傷ついているなど、後世の狼男伝説の定番的な要素がすでに現れているのです。

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