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火星探査機キュリオシティが示す火星の謎と課題(中編)

火星

2012年に火星に着陸した無人探査機キュリオシティは、2004年に着陸に成功していたスピリットとオポチュニティとの比較では、5倍の重量と10倍の科学技術部品の搭載を誇り、2000年代前半よりもはるかに多くの研究材料の採取が可能である、といわれています。着陸以来キュリオシティは、試料の採取をはじめとして、様々な成果を上げるとともに、今後の火星研究に向けて、いくつもの課題を検知しています。

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総額25億ドルの予算でリハーサルなし

2012年8月6日、火星無人探査機キュリオシティは、着陸を目指して火星の大気圏に突入しました。遠く離れた地球から火星の大地に到着し、わずか数キロメートル四方の現地調査をおこなうための予算は、なんと25億ドル(日本円で約2500億円)といいますから、すべてが遠隔操作でおこなわれる中での大気圏突入は、失敗が許されない大きな山場であったことが想像できます。人類史上一度も体験したことのない火星体験突入は、「恐怖の7分間」と表現されています(アメリカの科学雑誌より)。

 
しかも、キュリオシティを着陸させるための母船は、宇宙空間を時速約2万1200キロメートルという速さで高速移動しており、着陸にかけられる所要時間はわずか数秒というものでした。システム開発や自動車製造のように、本番稼働環境での事前テストやリハーサルをおこなうことができない中での「宇宙での無人探査機着陸操作」は、大変な難易度とリスクを包含した挑戦だったことがわかります。

 

 

地球からの指示は14分後

しかも、地球と比較して大気の薄い火星では、着陸アクション中に想定外のアクシデントが起こる可能性が高い中、地球からの指示や機械操作の変更の伝達には、約14分の所要時間が必要(それでも約5600万キロメートルという距離を考えると、驚くべき伝達スピードです)で、リアルタイムの修正や調整が困難である状況下、結果的にキュリオシティの着陸が成功したことは、むしろ「奇跡に近い」ことだった、ともいえます。

 
火星という、遠く離れた宇宙空間を探索するというミッションは、かつて日本が鎖国していた時代において、アフリカの秘境や中国奥地、アメリカやヨーロッパが「想像上の遠い世界」だったことと同じように、想像を絶する世界であることがわかります。これらの課題(課題というよりも、むしろ「未知の領域の探索における発生しうるあらゆるリスク」とも言い換えることができます)を解消するためには、一にも二にも技術力と工数(=費用)が必要であることは明らかです。

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カテゴリ: その他

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