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陰陽師・安倍晴明が創り出した呪術・祭祀とは

安倍晴明

飛鳥時代(7世紀)に起源を持つと言われる陰陽師ですが、安倍晴明もそうであった陰陽寮の官人陰陽師(公的な役職の陰陽師)のように、本来は暦を制定し朝廷の政策の吉凶を占うなど国家全体に関わる仕事をしていました。
しかし平安時代になり安倍晴明が活躍する頃には、朝廷や天皇また国家全体のことだけではなく、特定の個人の災いや穢れなどに関わる占いや予防、対処などの仕事も主流となってきます。というのも朝廷の祭祀を司る神道の神祇官では、個人の病気や死といった穢れや呪詛に関わる祓えができなかったからで、それらは陰陽師の役割になったのです。
そのようななかで、時の「陰陽道第一者」(最も優れた陰陽師)となり、天皇の直属陰陽師である「蔵人所陰陽師」にもなった安倍晴明は、陰陽道の代表的な祭祀を創り出しました。

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延命長寿を祈る「泰山府君祭」

平安時代の中頃になると、それまでの天皇を中心とした律令制から藤原家の摂関政治へと貴族社会は大きく変化して行きます。そのなかで平安貴族たちには、この世での個人の幸福つまり現世利益を求める考え方が強くなり、それは庶民など各層へも広まります。
そんな現世利益の最大のものが、より長く健康で生きたいという「延命長寿」でした。延命長寿とは、現代においても変わることのない、人間にとっての永遠の望みなのかも知れません。その考え方は日本ではまさに平安時代から強くなり、今日まで続いて来たということのようです。
さて、その平安貴族たちの延命長寿の望みに対応したのが安倍晴明であり、彼が創り出した「泰山府君祭」という祭祀でした。

 

 

地獄の閻魔大王に延命を願ってくれる泰山府君

中国の道教系では死後の世界に関わる冥府の神に、「司命」「司録」「本命」「天官」「地官」「水官」「泰山府君」という7人の神々がいます。この神々を総称して「七献」というのですが、この七献を祀ることで延命長寿を願う「七献上章祭」という祭祀がありました。

 
この七献の神々のなかでも特に泰山府君という神は、中国で古くから死者が赴く山とされる「泰山」にいて、死者の帳簿である「都籍」を管理していた神様だということです。その後、道教ではこの泰山府君が冥界の君主であり地獄で死者を裁く「十王」のひとりということになり、十王の筆頭である「閻魔王」に次ぐ二番目の神になりました。

 
密教では、泰山府君は閻魔王に取り次ぐ中次ぎ役とされ、もし人間が閻魔王に延命を願うとすると、まず泰山府君に願って取り次いでもらわなくてはなりません。そこで安倍晴明は、この泰山府君を直接祀り延命長寿を願うのが良いとする、「泰山府君祭」という祭祀を創出したのです。

 
泰山府君祭では祭祀の道具として硯や筆、墨が用意され、泰山府君に寿命を書き換えてもらうのだそうです。願いを聞き入れると泰山府君は、北斗(北斗七星)が司る「死籍」から南斗(南斗六星)が司る「生籍」へと寿命を付け替えてくれるといいます。
安倍晴明以降、泰山府君祭は陰陽道で最も重要な祭祀となりました。

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