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龍(ドラゴン)…洋の東西を越えて世界に伝えられる不思議な存在

ドラゴン
 
この地球に生きるもので、けものでも魚でも昆虫でも植物でもなく、もちろん人間でもない。ふだん人間の前にはその姿を見せることはほとんどなく、しかし人々の記憶や伝説のなかではその姿を見たと伝えられている不思議な存在。禍いをもたらすものとして恐れられ、また神聖な存在として畏敬され、ときには恩恵を被り感謝されもする存在。西洋をはじめとした世界各地の伝説上の生きものなども含め、それらをとりあえず広い意味で『妖怪』と呼んでみます。

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そんな妖怪のなかで、おそらくは最古のもののひとつであり、世界各地に共通して伝えられてきた存在と言えば、「龍(竜)」または「ドラゴン」ではないでしょうか。

龍こそは、特定の国やある地域、ある場所にだけいる妖怪ではなく、つまりどこかの限られた人たちの文化にだけ伝えられた不思議な存在ではなく、世界の様々な文化に共通して伝えられて来た存在なのです。ただし、それは必ずしも世界中で同じイメージ、同じ立場や役割で伝えられて来たわけではありません。

 

悪の象徴のドラゴンと神聖な龍

龍を英語で言うとドラゴン(dragon)となります。
ドラゴンと言えば西洋では一般的に恐ろしい生きもの、邪悪な存在として描かれることが多いのではないでしょうか。キリスト教では悪魔と同一視されますし、人々に禍いをもたらすドラゴンを英雄が退治する「竜退治物語」として語られることが多いかも知れません。

しかし反対に、中国をはじめとした東洋の龍は神に等しい神聖な存在、つまり神獣や霊獣とされるのが一般的であり、中国では皇帝のシンボルとされてきました。
日本人にとっても龍は、多くの寺社で龍神が祀られているように古くから水の神とされるなど、とても神聖な存在と考えられています。

このように西洋では悪であり、東洋では善である、というまったく正反対な位置づけにあるという点でも、龍はとても不思議な存在と言えるでしょう。

 

「龍」と「竜」

ドラゴンの語源はギリシャ語の「ドラコーン」ですが、これは「はっきり見る、見つける、鋭い眼差しをしている」といった意味のギリシャ語の「デルコマイ」という言葉に関連があるそうです。

それでは龍には、どうして「龍」と「竜」の2つの漢字があるのでしょうか。
日本では「龍」も「竜」もどちらも人名用漢字で、常用漢字には「竜」だけが採用されています。「龍」は旧字(正字)で「竜」は新字(異体字)とされていますから、「竜」の文字が常用漢字になったというわけです。

しかし実は、旧字とされている「龍」よりも「竜」の方が、漢字の成り立ちからすると古いのだそうです。中国発祥の漢字で最も古いものは、「殷(いん)」の時代(紀元前17世紀頃から紀元前11世紀頃)の後期に使われていた「甲骨文字」で、このなかにある「りゅう」の文字は「竜」に近いかたちなのです。その後、神聖な存在を表す文字として装飾が加えられ「龍」の漢字となった、ということなのだそうです。

文字だけでも龍は、ほかの存在と違う面白さがあります。龍の漢字や言葉については、また別の記事でも紹介したいと思いますが、漢字の使い方としてこのシリーズでは、東洋と日本の神聖な存在ということで、基本的には装飾された「龍」という文字を使用したいと思います。

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