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四国お遍路の天狗寺…八栗寺・中将坊堂(第八十五番札所)

山
 
真言宗の開祖であり、山岳信仰や修験道とも関わりの深い真言密教を確立した弘法大師・空海の故郷は、四国の讃岐国(香川県)です。空海の入定後(真言宗では空海は亡くなったのではなく現在も修行=入定を続けている)、修行僧や修験者が空海の足跡を辿って修行の旅を行ったことから、阿波国(徳島県)を出発点に、土佐国(高知県)、伊予国(愛媛県)、讃岐国と四国の八十八ヶ所の霊場寺院を巡る、四国巡礼(四国遍路)が生まれました。

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江戸時代には庶民のあいだでも巡礼が流行し、四国遍路は日本で最もポピュラーな修行の旅となり現在にまで続いています。最近では海外にも知られるようになり、外国人のお遍路さんも多くいるそうです。
そしてこの四国八十八ヶ所霊場寺院のなかに、実は天狗を祀るお寺があるのです。

 

讃岐三大天狗のひとりを祀る「八栗寺・中将坊堂」

「八栗寺(やくりでら)」は、四国八十八ヶ所霊場の第八十五番札所。真言宗大覚寺派の寺院で、香川県高松市にあります。そしてこの八栗寺の「中将坊堂」に祀られているのが、「中将坊大権現」という天狗様。

讃岐は空海の故郷であり真言密教や修験道と関わりが大きく、大天狗のなかの大天狗とされる崇徳上皇が配流された地でもあることから、天狗とはとても縁の深い地です。この讃岐には日本の八天狗に数えられ崇徳上皇を守る「白峰相模坊」をはじめ、「金毘羅山金剛坊」そして中将坊大権現の讃岐三大天狗がいます。

中将坊堂は、八栗寺の背後にある五剣山が修験僧の修行の地であったことから、五剣山を護る天狗である中将坊を祀ったもので、中将坊大権現は修験僧の守り神となりました。五剣山は標高375mのそれほど高くはない山ですが、地上から空に向かって剣を突き上げるように岩山がそそり立つ神秘的な山です。

天長6年(829年)空海が55歳のころ、この山に登って求聞寺法という行を修めたとき、5本の剣が天から降りて来て山の鎮守である蔵王権現が現れ、この山が霊山であることを告げたのだと言います。空海はその5本の剣を山中に埋めて鎮護とし、この山を五剣山と名付けました。

蔵王権現は日本独自の神様で修験道の本尊とされていますから、中将坊はおそらくは蔵王権現の配下で、五剣山に古くから棲む山神様だったのかも知れません。

 

天狗の下駄を納めて願い事をする中将坊堂

中将坊は、夜になると五剣山から下りて来て、庶民のために良いことをして朝になると山に帰って行く天狗なのだそうです。

願い事のある人は、この中将坊堂に天狗の履物である下駄を奉納します。そうすると中将坊は夜のあいだにその下駄を履いて走り回り、願い事を叶えるために奔走してくれるのだとか。翌朝、もし奉納した下駄の歯が汚れていれば、中将坊がこの下駄を履いて走り回った証拠であり、願い事は叶うと信じられました。現在でも中将坊堂には、多くの奉納された天狗の下駄が置かれています。

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