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平安時代の天狗は鳥の姿が一般的だった!今昔物語の天狗たち

天狗
 
現代の私たちが天狗の姿を思い浮かべるとすると、身長が高く長く高い鼻の赤ら顔で、背中には翼があって空を飛翔し、手には大風を巻き起こす大きな葉団扇(はうちわ)を持ち、一本歯の高下駄をはいている、人間の姿に近いいわゆる「鼻高天狗」ではないでしょうか。
鼻高天狗は大天狗とも呼ばれ、天狗の一般的な姿としてイメージされています。

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しかし、平安時代の今昔物語に描かれた天狗はこの鼻高天狗ではなく、後にカラス天狗と呼ばれるような鳥の顔に人間の身体を持った半分鳥で半分人間の姿でした。
それもカラスというよりは鳶(トビ)や鷹(タカ)、ハヤブサといった種類のものです。

 

トビの姿で龍と争う天狗のお話

今昔物語の巻20第11話には、天狗が龍の王と争うというお話が出て来ます。
滋賀県の比良山に天狗が住んでいました。この比良山は琵琶湖の西側にある山地で比叡山の北方の位置にあり、もとは比叡山に住んでいた治朗坊という大天狗が、最澄たちが比叡山に入ったので比良山に移り住んだのだともされています。

今昔物語に出てくる比良山の天狗が治朗坊かどうかはわかりませんが、この天狗の姿は鳶(トビ)の姿をしているのです。

ある日この比良山の天狗が讃岐に現れ、小さな蛇を捕らえて食べようとします。しかし食べようにもどうしても食べることができません。実はこの蛇は龍の化身だったのです。
天狗は仕方なくこの蛇を比良山まで持ち帰り、閉じ込めておきます。蛇は山の中に閉じ込められてしまったものですから近くに水が無く、龍に変身して逃げ出すことができません。

 

マグソタカに姿を変えられてしまう天狗

すると今度は比良山の天狗が、ひとりの僧をさらって来ます。僧は蛇と同じ場所に閉じ込められるのですが、この僧は水瓶を持っていました。蛇は僧から水瓶の水をもらい、ようやく龍へと変身できたのでした。

その頃、天狗は荒法師の姿に変身して京の都を歩いていました。龍は比良山から京の都へと行き、比良山の天狗を見つけ出します。水を得て蘇った龍の力は強く、天狗を蹴り殺してしまいます。天狗は龍に蹴り殺されて、荒法師からマグソタカの姿へと変身させられてしまったということでした。

このマグソタカというのは「チョウゲンボウ(長元坊)」という小型のハヤブサの一種で、クソトビとかクソタカといった名前でも呼ばれています。マグソタカにしてもクソトビにしても、どうもなんとなく情けなさそうな名前なのですが、これは鷹狩りには使えないタカだということで「クソ」という名前が付けられたということなのだそうです。

いずれにしろ比良山の天狗は龍に負けたせいで、強い天狗からなんとも弱そうで小型のマグソタカに、姿を変えられてしまったということなのでしょうね。

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