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海の怪物「クラーケン」は北欧の伝説のサガにも登場していた?

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12世紀から13世紀の中世にアイスランドで書かれた北欧の「伝説のサガ」には、海の巨大怪物「クラーケン」の痕跡と思われる海の怪物の伝説が登場します。

その物語は、ティルヴィングという呪いの魔剣を巡り幾世代にわたって語られる「ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ」で、登場人物のひとりである弓の名手オルヴァル・オッドルの物語のなかのエピソードで記されています。

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2つの海の怪物に遭遇する

このエピソードでは、じつはクラーケンという名前は実際には登場しません。その海の怪物とは「ハーヴグーヴァ」と「リンギバク」という2つの怪物です。

オルヴァル・オッドルが、北極諸島のヘルランド(バフィン島:カナダ)に向けてグリーンランドの海を航海しているときのことです。彼は弟のソードをオグムンド・ツソックに殺され、ツソックと戦うために向かっているのでした。船の甲板士官のヴィクニルは、この海域がとても危険であることを知っていたので、船の航行を翌日からにするようにオルヴァル・オッドルに同意させました。

そして翌日に航海を始めると、海中から突き出た2つの大きな岩を見つけます。オッドルが不思議に思っているうちに、今度はヘザーという植物の薮で覆われた大きな島を通過します。好奇心にかられたオッドルが5人の男をボートで送り出すと、そのとき先ほど見えていた2つの大きな岩が海中へと消えてしまいました。

この出来事に、ヘザーに覆われた島に上陸しようとしていた5人の男は船に戻ります。

 

オルヴァル・オッドルを襲うために召還された怪物

もし男たちが、岩が海中に消えるよりも早く島に上陸していたら、彼らは溺れてしまっていたでしょうと、甲板士官のヴィクニルはオルヴァル・オッドルに説明しました。

海中から突き出ていた2つの大きな岩とヘザーに覆われた島は、ハーヴグーヴァとリンギバクという2つの海の怪物に違いないと言うのです。2つの大きな岩はハーヴグーヴァの鼻と下顎であり、島はリンギバクの身体であるということでした。ちなみにハーヴグーヴァという名前は英語では「sea mist」つまり「海の霧」という意味で、リンギバクは「heather back」つまり「ヘザーの背中」という意味になります。

この2つの海の怪物は、オグムンド・ツソックがオルヴァル・オッドルと乗組員を殺すために召還したものだったのです。

 

サガの2つの怪物はクラーケンだった?

ハーヴグーヴァとリンギバクは、世界最大のクジラなのだといいます。ハーヴグーヴァは海に棲むなかで最も巨大な怪物であり、船も人間もクジラでさえも飲み込んでしまいます。

何日間も水中に留まって頭と鼻を水面上に出していて、海上に現れた大きな岩はその鼻と下顎であり、オッドルの船はこの怪物の顎の間を通過したのだということでした。

未然に難を逃れ、無事航海を終えたオルヴァル・オッドルは、老人の姿に変装してヘルランドに到着します。やがて英雄としての姿を明らかにし、毛皮の国の王を倒したオッドルはシルキシフ王女と結ばれ次の王になりました。

オルヴァル・オッドルが出会ったハーヴグーヴァとリンギバクという2つの海の怪物は、ノルウェーで伝えられていたクラーケンと同じ怪物であるとされ、このサガがクラーケンを記した初めての書物のひとつであると考えられるようになりました。

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