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狼男の源流を辿れ!東欧の狼男ヴコドラクと獣人オブル

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ヨーロッパの狼男の源流は、古代ギリシャやローマの地中海世界とヨーロッパの北方、北欧神話のなかに伝わっていました。狼は地球の北半球に広く分布していましたから、当然に狼男の源流も各地にあったのだと思います。特にヨーロッパでは、北欧からドイツ、東欧などの深い森林地帯には、多くの狼が棲息していました。

別の記事でご紹介しましたが、古代ギリシャの歴史家であるヘロドトス(紀元前485年頃から紀元前420年頃)の『ヒストリアイ(歴史)』という書物に記された、狼に変身するという「ネウロイ族」は現在のポーランド東部からベラルーシ、リトアニア方面の広い地域で活動していたと考えられています。

そんな古代の流れを継いでいるのでしょうか、東ヨーロッパにはとても怖い狼男がいたという伝承があります。

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バルカンに伝わる狼男ヴコドラク

ギリシャの北方、黒海の西側のバルカン地域に伝わる「ヴコドラク」は「狼の毛皮を着た者」という意味で、つまり北欧神話の狂戦士「ウールヴヘジン(狼の毛皮を被った者)」と同じ意味ですが、それは決して神々や王直属の兵士ではなく、とても恐ろしい怪物だったのです。

セルビアの伝承ではヴコドラクは半分人間で半分狼の獣人で、人間を見つけると追いかけて捕らえ、貪り食うのだといいます。ときには家の中にも侵入してきて人間を襲い、一方では人間の血をすする吸血鬼とも考えられていました。

またヴコドラクは、日食や月食を引き起こすという伝承もあります。これは北欧神話の「ラグナロク(神々の黄昏)」で最も恐ろしい狼の怪物フェンリルの子どもであるスコルとハティによって太陽と月が飲み込まれたことから、日食と月食が魔狼のしわざであるという話につながります。つまり、満月の夜に変身する狼男とは、月の光を吸い込み飲み込むのだという考えから生まれたということなのでしょう。

 

北コーカサスの獣人オブル

コーカサス山脈よりも北に広がる、黒海とカスピ海に挟まれた北コーカサス地方に住むテュルク系民族のカラチャイ人の伝承には、「オブル」と呼ばれる獣人化現象があります。

このオブルになるのはだいたいが年老いた者で、獣人化を起こすとまずは猫の姿になって煙突から外に出て行き、子どもの血を吸って帰るのだとか。見つかって警戒されると今度は狼の姿になってより遠くへと行き、子牛や馬の血を吸うのだそうです。

このように東ヨーロッパの狼男や獣人は、人や家畜を襲うと同時にその血を吸うことから吸血鬼と同一視されることが多いようです。また吸血鬼と同じように、狼男に噛まれるとその噛まれた人間も狼男になってしまうという伝承も伝わりました。これは人も獣も共通して感染し、狼が伝染させたとされる狂犬病の流行に由来するのではないか、という説もあります。日本でも江戸時代の亨保年間(1732年頃)に狼の狂犬病が流行し、それによって狼が家畜を襲うことが増加し狼の駆除に拍車がかかりました。

人間の社会の発展により人間が狼の棲む森へ近づくにつれ、狼への怖れが増加し狼男も恐ろしい存在へとなって行ったのかも知れません。

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