> >

キジムナーが人にもたらすもの、キジムナーが怖れるもの

143420
 
ガジュマルの木に棲むという沖縄の木の精霊「キジムナー」。
人間に幸運をもたらす人なつこい精霊というキャラクターの一方で、仲良くなるとその人に憑いてしまう怖い精霊であるという伝承もあります。そのキジムナーは、仲良くなった人間の家に夜な夜な現れて、寝ているその人の上に覆いかぶさって押さえつけるようになったのだとか。

はたしてキジムナーは人間にとって良い精霊なのか、それとも迷惑で怖い存在なのでしょうか。ある家を豊かにしたキジムナーの伝承がありますので、それをご紹介することにしましょう。

スポンサードリンク


 

家を建てる手伝いをしたキジムナー

沖縄本島の北部に大宜味村という村がありますが、そこの屋嘉比というところに六又屋(ムチマタヤー)という家がありました。

その家で昔に新しく家を建てることがあり、家を建てる模合(もあい)の仲間の数人と山に泊まりがけで木を伐採して材木をつくることになりました。模合というのは、複数の人たちがグループをつくりお金を貯めて出したり、労働力を出し合ったりする沖縄の相互扶助システムのことです。

さて、山の中で材木をつくる仕事をしていると、木の精霊の「プルパカヤー」と仲良くなりました。プルパカヤーはこの地方でのキジムナーの別名です。

プルパカヤーはとても力が強く、材木を家を建てる場所に運ぶときにも夜中にあっという間に運び込んでしまい、村人たちはびっくりしました。

 

仲良くなって豊漁をもたらしたキジムナー

こうしてプルパカヤーと仲良くなった六又屋の主人は、プルパカヤーとの縁が切れなくなり、毎晩のように誘われて海に漁に行くようになります。

プルパカヤーは海の上を歩くように移動し、瞬く間にたくさんの魚を獲ってしまいます。しかしプルパカヤーが獲った魚は、みな片方の目をプルパカヤーが食べてしまい無くなっていました。

プルパカヤーはこうして毎晩誘いに来るのですが、「海の上では屁をするなよ。もし屁をしたらお前を捨てて行くから死ぬことになるよ」と言うので、六又屋の主人は屁を我慢していました。プルパカヤーは屁がとても苦手で嫌いだったのです。

そうして六又屋の主人はプルパカヤーのおかげで家を新築し、魚もいつも大漁で、たいへんな金持ちになったのだそうです。

 

キジムナーが嫌い怖れるものとは

金持ちになった六又屋の主人は、しかしいつまでもプルパカヤーと仲良くしていると、いつかは大変なことになると思い、ある日プルパカヤーに「お前が怖くて嫌いなものは何だ」と聞きました。

そうするとプルパカヤーは「わたしが怖くて嫌いなのは、人間の屁とタコだ」と言います。「どんなことがあってもタコは獲って来るな」と言うので、次の日に六又屋の主人はタコを獲って来て家の門に下げておきました。すると、やって来てそれを見たプルパカヤーはびっくりして逃げてしまい、それからは来なくなりました。

その後、六又屋ではプルパカヤーのお陰で金持ちになったのに裏切ってしまったということで、後の祟りを畏れてプルパカヤーを祀るお宮をつくり、月に2回そのお宮を拝むようになったことから、六又屋はプルパカヤーの家と呼ばれるようになったということです。

このお話のように、キジムナーは家を豊かにすると同時に、魅入られてはいけない怖れられる存在であるという、二面性を持っていたことがわかります。

このエントリーをはてなブックマークに追加


スポンサードリンク
スポンサードリンク

Comments are closed.