逮捕者まで!エクトプラズムは本物なのかインチキなのか
1913年にノーベル生理学・医学賞を受賞したフランス人生理学者のシャルル・ロベール・リシェによって名付けられた謎の物質「エクトプラズム(ectplasm)」は、はたして本物の心霊現象だったのか、それともニセ霊媒師によるインチキだったのでしょうか。
史上最も優れた物理霊媒とされたエヴァ・カリエールをはじめとして、19世紀末から20世紀の初めにかけて多くの霊媒がエクトプラズムを出現させたとされています。しかしそれらは常に本物とインチキとの間を揺れ動くものでした。
エクトプラズムはつくりもの??
イギリス・ウェールズの元炭坑労働者だったジャック・ウェバーは、妻の影響を受けて心霊現象に取組むようになり、やがてエクトプラズムを出現させ霊との交信ができるとする霊媒師となりました。
彼が得意だったのは、エクトプラズムでラッパ(細いメガホン)を宙に浮かせ、メッセージを伝える相手を指し示すというもの。しかしマジシャンのジュリアン・プロスカウアーは、これをインチキだと主張しました。
プロスカウアーによると、ラッパを浮かせているというエクトプラズムは実はラッパを棒で支えているものであり、その棒にクレープ紙というひだやしわがついた白い紙を巻いてエクトプラズムに見せているということでした。
その真偽は定かではありませんが、エクトプラズムという物質化された心霊現象はそのわかりやすさから、常に疑いの目で見られました。
最後の魔術禁止法逮捕者
ヴィクトリア・ヘレン・ダンカンは、1897年生まれのスコットランドの主婦で著名な霊媒師です。彼女もエクトプラズムによる物質化現象で知られますが、それ以上にヘレン・ダンカンを有名にしたのは、彼女が1735年にイギリスで制定された魔術禁止法によって刑務所に収監された最後の人物だったからでした。
1933年7月にヘレン・ダンカンは囮捜査によって初めて逮捕されます。その後の1944年1月にポーツマスで開かれていた交霊会では警察が踏み込み、警官がエクトプラズムを掴もうとするとそれは瞬時に消え去ったということです。
ヘレン・ダンカンと3人の交霊会参加者は逮捕され浮浪罪に問われますが、ヘレンは罪を認めなかったためロンドンのホロウェー刑務所に送られ、裁判では交霊会参加者を騙してお金を得たという窃盗罪と魔術禁止法違反で告訴されます。
投獄されてしまったヘレン
裁判の結果、窃盗罪は無罪となりますが魔術禁止法違反は有罪となり、ホロウェー刑務所に9ヶ月間投獄されてしまいました。ちなみにイギリスの魔術禁止法は1951年に廃止され、替わりに霊媒虚偽行為禁止法が制定されます。
それではヘレン・ダンカンのエクトプラズムや物質化現象は本物だったのか、それともインチキだったのでしょうか。
彼女が口から吐き出すエクトプラズムは、卵白とトイレットペーパーを混ぜ合わせたものだといわれています。また全身物理化によって人間の姿を形作ったのはシーツに顔を描いただけのものだったとされています。
1956年にノッティンガムが交霊会を行っているところに、再び警官が踏み込みます。このとき彼女は意識不明の重体となり、5週間後には他界することになりました。