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時の流れのなかで変化する火の精霊サラマンダー

サラマンダー

「四大精霊」のひとつで火の精霊のサラマンダーは、古代ギリシャから中世ヨーロッパへと受け継がれるなかで、その姿かたちは小さなドラゴン、実際には両生類の生き物として存在するサラマンダー(ファイアーサラマンダー)のままでした。

それが、現在のファンタジー作品で描かれるような人間に近い姿になったのは、まさに「四大精霊」の存在を唱えた16世紀の錬金術師で医師、化学者で神秘思想家のパラケルススからだったのです。

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火を司り守護するサラマンダー

パラケルススの四大精霊をあらためて紹介しますと、古代ギリシャ哲学から伝わる「四大元素」つまり火、水、空気(風)、土のそれぞれを司る精霊が存在する、というものでした。

サラマンダーで言えば、古代ギリシャ人や中世の錬金術師をはじめとした人びとが信じた、サラマンダーとは火を操ったり火を打ち消したりする力がある、つまり火を征する存在から火を司り守護する存在へと進化したわけです。サラマンダーは、まさに火の精髄とも言うべきものになりました。

これは、古代や中世では火は神が創りだした恐ろしいものであり、人間には自由に操ったり制御したりできない存在だったものが、14世紀から始まるルネサンス期を経て近世になると火も人間が操れる存在になって行ったからかも知れません。

ヨーローッパでも14世紀には黒色火薬の製造が始まっていますから、サラマンダーは人間が操るようになった火を司り守護する精霊へとランクアップしたわけです。

 

 

人間型へと変化して行ったサラマンダー

また、パラケルススは精霊というものを「人間に似ているがアダムから生まれたものではない。人間やその他の動物とは異なった別の被造物である」と言っています。その身振りや話し方、振る舞いも人間に似ていて姿かたちも人間に近い、としています。

他の四大精霊の出自はまた別の記事で探るとして、サラマンダーは両生類のイモリの仲間ではなかったっけ?(サンショウウオとされることもありますがイモリ科だそうです)なのですが、パラケルススによって人間の言葉を話し姿かたちも人間に近い存在へと変わりました。

またパラケルススは、サラマンダーは火の炎の中を棲家とし、他の四大精霊と同じように人間の技術を持っていて仕事もし、食事や飲み物もとると言っています。ただ、四大精霊たちはその四大元素の棲家を去れば、人間には姿が見えなくなるのだそうです。

こうして小さなドラゴンや両生類イモリ科の生き物だったサラマンダーは、言ってみれば人間型の精霊=妖精へと変化しました。

19世紀から20世紀に生きた“最大の魔人”といわれ“世界で最も邪悪な男”とも呼ばれた魔術師のアレイスター・クロウリーは、サラマンダーを「灼熱の黒い煙のような巨人」と表現したそうです。

他の四大精霊たちの姿かたちのイメージが、時代の流れのなかでそれほど大きく変わらないのに対して、サラマンダーは時代とともに大きく変化して行った精霊とも言えるでしょう。

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